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「ニッケル・ボーイズ 」 2024

ニッケル・ボーイズ

★★★☆☆

 

あらすじ

 1960年代アメリカ。冤罪で窃盗犯の共犯者にされてしまったアフリカ系アメリカ人の少年は、更生施設に送られる。

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 ピュリッツアー賞受賞作の小説が原作。140分。

 

感想

 冤罪で更生施設に入れられてしまったアフリカ系アメリカ人の少年が主人公だ。彼の視点がとらえた映像だけで進行する。つまり、主人公自身の姿が映し出されることはない。断片的なストーリー展開も相まって、序盤はなかなか慣れずにかなり戸惑った。この視点の持ち主は誰なのだと、アイデンティティ的不安もある。

 

 

 しかし、彼が施設に入ってからは、仲良くなった友人の視点も混じるようになり、互いの姿が見えるようになってからはだいぶ落ち着いてきた。それまでどこか視点が定まらなかったが、相手を中心にとらえることで安定したように感じられる。友人ができたことで、彼が精神的に安心感を得たことを示唆してもいるのだろう。

 

 施設は人種で隔離され、主人公らはおざなりな教育しか受けられず、無償労働で搾取され、些細なことで過酷な体罰を受けている。公民権運動が盛り上がりを見せる中、触発されていた主人公は、実態をノートに記録して、世間に告発する機会をうかがうようになる。

 

 要するに、アフリカ系アメリカ人を差別し、人権を無視して搾取・虐待することで儲けているとんでもない施設に主人公が入ってしまったということだ。だが正直なところ、最初はそれにピンと来なかった。なんせ60年も昔の話だから、決して良いことではないが、搾取や暴力なんて多少は横行していたのでは?と、思ってしまっていた自分がいた。

 

 逆にこの時代に、すでにそんな人権感覚があったのかと素直に感心する。この時代の日本なんて、おそらく普通の学校ですらこれくらいの体罰はあったのではないだろうか。なんせ今でも受刑者への虐待が時々発覚し、しかも社会問題にすらならない国だ。なんなら「犯罪者なんだからそれくらい良いだろう」と擁護する声さえ挙がったりする。意識の違いを痛感する。

受刑者に暴行や虐待、刑務官13人を書類送検…顔にスプレー噴射やホコリついた薬飲ませる : 読売新聞

 

 とはいえ、指示に従わなかった少年を殺害までするのだから、さすがにとんでもないことは分かってくる。主人公も行動を起こした結果、絶体絶命の状況に追い込まれる。刑務所時代を過去の出来事とする現在の主人公の様子が時おり挿入されていたので、まさかの結末に驚かされた。まるで一つの視点のように主人公らの視点を交互に描いていたのも、現代パートではやや俯瞰の視点で主人公の背中をとらえていたのも、そういことだったのかと腑に落ちた。

 

 ワニが出てくるなど映像のコラージュ的に進行する箇所もあり、ややわかりづらいところもある映画だ。冷静に考えると、冤罪の主人公は何も悪いことをしてないわけで、それなのにこんな目に遭ったのかとやり切れない気持ちになる。人権を守ることは大事だと、改めて思い知らされる。鏡を見つめることで一度だけ同じ画面に登場した二人の姿が、いつまでも心に残り続ける。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ラメル・ロス

 

原作 ニッケル・ボーイズ

 

脚本/製作 ジョスリン・バーンズ

 

製作 デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー デビッド・レバイン

 

製作総指揮

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ギャビー・シェパード/エミリー・ウルフ/ケネス・ユー/チャドウィック・プリチャード

 

出演 イーサン・ヘリス/ブランドン・ウィルソン/ハミッシュ・リンクレイター/フレッド・ヘッキンジャー/ダビード・ディグス/ジミー・フェイルズ/アーンジャニュー・エリス=テイラー/ルーク・テニー/クレイグ・テイトグ・テイト

 

 

 

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