★★★☆☆
あらすじ
売れっ子タレントの男は、マネージャーの恋人と仲違いしたことがきっかけで仕事を放りだし、あるカップルの依頼に応えて九州に車を走らせる。
石原裕次郎、浅丘ルリ子、芦川いづみら出演、蔵原惟繕監督。典子三部作の第1作。104分。
感想
売れっ子のタレントが主人公だ。当時のタレントは何をやっていたのだろうと興味が湧くが、ラジオのDJやテレビの司会、討論番組など、言論人の延長線上のような活動内容だった。それが長い歴史を経て、芸人やアイドルがその位置を取って代わり、アポなしで飲食店の撮影許可の交渉をしたり、食レポをするようになったのかと、感慨深くなる。良いのか悪いのか知らないが。
主人公とマネージャーの恋人は、敢えてプラトニックな関係を貫いている。たかが恋愛を真面目に考えすぎているというか、思想が強いというか、面倒くさいなと思ってしまうが、彼らもまた旧弊を打破しようとする若者たちだ。堅苦しい社会通念から脱するためには堅苦しい理論が必要な段階があるのかもしれない。その段階を経た後で、難しい話はよく分からないけど、とにかくやりたいようにやる、という現在のような態度が通用するようになるのだろう。
主人公は恋人との関係が険悪になったことをきっかけに、あるカップルが募集した九州に車を届ける役目を引受け、仕事を放りだしてしまう。その主人公のあとを恋人が追う。東京から九州へ車を走らせるロードムービーとなっていく。
今でこそ東京から九州なんて一日で到着してしまうが、まだ道路も整備されておらず、路面状況も悪い当時だと、何日もかかるちょっとした冒険だ。現在とは全然違う日本各地の昔の風景が映し出されて、それだけでもかなり楽しめる。そして知っている場所が出てくると、昔はこんな感じだったのかとしみじみとしてしまう。
主人公を追う恋人の気がかりが、最初は二人の関係ではなく、ドタキャンした仕事のことだったのは気になったが、次第に言葉を交わすこともなくなり、ただ無言であとを追うだけになってくると、映画に異様な雰囲気が満ち始めた。途中で変則的なルートを取った主人公を見失った時には、彼がどこに行ったのかを推理するサスペンス風味も出てきたりして、二人の情念や執念が伝わってくるような、奇妙な空気感のロードムービーとなっている。
二人がテレビ局の安易なヒューマニズムを拒否して、映画は幕を閉じる。最初は今どきの若者を描いた軽快な感じだったのに、次第に硬派で重厚な、じっとりとした内容へと変貌していった。ただ、主人公が恋人に迫るも拒まれて怒っただけなんだけどね、と思わなくもない。そんなことで、日本を股にかけた大騒ぎをしてしまったのかと考えると、ちょっと面白い。
スタッフ/キャスト
監督 蔵原惟繕
脚本 山田信夫
製作 水の江滝子
出演 石原裕次郎/浅丘ルリ子/芦川いづみ/小池朝雄/長門裕之/川地民夫/草薙幸二郎/高品格/菅原通済*
*特別出演
音楽/出演(特別出演) 黛敏郎
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