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「ニンゲン合格」 1999

ニンゲン合格

★★★☆☆

 

あらすじ

 交通事故で昏睡状態にあった青年が、10年ぶりに目覚める。

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 西島秀俊主演、役所広司、麻生久美子、哀川翔ら出演。黒沢清監督。109分。

 

感想

 10年ぶりに昏睡状態から目覚めた青年が主人公だ。劇的な始まりだが、その割には皆が淡々としているのが面白い。だが現実なんてそんなものだ。大げさなリアクションなんて滅多にしないし、たとえ驚いても、すぐにそれは日常に溶けていく。

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 主人公も喜ぶでも戸惑うでもなく、淡々としている。彼からすれば朝に目覚めたのと同じ感覚なのだろう。ただ、「目覚めたら10年経っていました。さあどうする?」と、無言で問いかけられているような圧力には困惑しているようでもある。今のままでいたいのに、という気持ちが見える。なにか新しいことをしようとすると必死に抵抗する。

 

 

 主人公が眠っている間に、周囲の状況は大きく変わってしまっている。家業は畳まれ、家族はバラバラになり、実家には父親の知り合いが住んでいる。そんな状況をあらかじめ説明するのではなく、後から明らかにしていくスタイルだ。それがひっかかりとなって、話の行く末に興味を抱かせる。

 

 失った10年を取り戻すなんて意味が分からないと言っていた主人公だが、実家に戻った主人公がやろうとしたことは、まさにそれだった。家業を復活させて家族を元に戻し、元同級生らと悪さをして遊ぶ。そんな主人公の様子を、説明を省略した乾いたユーモアを交えながら描いていく。どこか北野武作品ぽくもある。

 

 しかし、いくら主人公が望んでも、失った過去は戻らない。元に戻ったかのように思えた家族も、結局はまたバラバラになってしまった。それでも一家が再び揃うという一応の目的は果たしたので、彼は失われた10年を取り戻せたと言えるのかもしれない。そして、過去だけでなく未来も見据えていたことがラストで分かる。「ニンゲン合格」と言えるほど、ちゃんと生きていた。

 

 加害者や妹の恋人など、他の登場人物たちの言動にも示唆的なものが多く、味わい深いものがある。一度見ただけではよく分からないシーンもあるが、何度も繰り返し見ることが出来そうな映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒沢清

 

出演 西島秀俊/菅田俊/りりィ/麻生久美子/哀川翔/大杉漣/洞口依子/鈴木ヒロミツ/豊原功補/諏訪太朗/アル北郷/ガンビーノ小林

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音楽 ゲイリー芦屋

 

ニンゲン合格

ニンゲン合格 - Wikipedia
【本編】『ニンゲン合格』<2週間限定配信>- YouTube

 

 

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