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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「日日是好日」 2018

日日是好日

★★★★☆

 

あらすじ

 ふとしたきっかけで従妹と共に近所に茶道を習いに行くようになった女子大生。タイトルの読みは「にちにちこれこうじつ」。

 

感想

 序盤の茶道を習い始めたばかりの主人公といとこが先生の指導を受ける様子は、コントを見ているようで面白かった。特に先生を演じる樹木希林の、しっかりと生徒の所作を観察しつつ、気になる点はたくさんあるけどなるべく言わないようにしようと我慢する様子が可笑しい。その上で、どうしても言わなければいけない時に出てくる指導の言葉はまるでツッコミのようだった。主演の黒木華、いとこ役の多部未華子も共にコミカルな良い演技を見せている。

 

 茶道の世界を紹介し、その奥深さや魅力を伝える映画だ。茶道では、頭で考えるのではなく勝手に体が動くようにと、同じ動作を何度も繰り返す。その様子を見ていたら、これは一種のマインドフルネスなのだろうなと感じた。心の中を空っぽにして一つの作業に集中する。華道や武道など日本の「道」はすべてこれを目指していると言える。無我の境地に到達するための鍛錬だ。雑事が考えれないほど作法が細かく決められているのもそのためなのかもしれない。

 

 

 そして無心に近づき、雑念が消えることによって神経は研ぎ澄まされ、今まで気づかなかった水の音や庭の微妙な変化に気付くようになる。そんな状態になれば、なんでもないような一日が途端に愛おしく感じるようになる。

 

 案外茶道も面白そうだと思ったが、何の説明もなくとりあえずやらせる指導方法はちょっと辛そうだ。何の説明もなく帛紗(ふくさ)の取り扱い方を教えた最初のシーンは、なぜそれを覚える必要があるのか意味が分からず、かなりイライラしてしまった。これでは洗脳の最初のステップと変わらない。日本の修行システムにも言えるが、こういう理不尽な所はもっと合理的にブラッシュアップしてもいいような気がする。

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 それから教室に通う人が全員女性だったのも気になったが、これは実際にそんな感じだということだろうか。だが、たまに街で見かける着物の女性達はどんな人たちなのかと不思議だったが、その多くはこんな事をしていたのだなと知見を得ることが出来た。

 

 お茶を習うことによって、多感な20代を過ごす主人公の心が変化していく様子が丁寧に描かれており、ただ見ているだけなのに自分まで茶道の神髄に触れられたような気になった。清々しい余韻に浸れる。

 

 それから、主人公を静かに見守り、優しく思いやる茶道の先生の温かな心遣いにも心を動かされた。こんな風に主人公の心の機微を感じられるのも、茶道をやっているからこそなのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 大森立嗣

 

原作 日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)


出演 黒木華/樹木希林/多部未華子/原田麻由/川村紗也/滝沢恵/山下美月/郡山冬果/岡本智礼/荒巻全紀/南一恵/鶴田真由/鶴見辰吾

 

音楽 世武裕子

 

日日是好日 (映画) - Wikipedia

 

 

登場する作品

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