★★★★☆
内容
最新科学の知見に基づき、脳だけでなく体や環境、他者を使って効率的に能力を高める方法を紹介していく。
感想
勉強したり仕事をしたりするとき、我々はいかに脳のパフォーマンスを上げるかばかりを気にしている。だが実際は、脳の外にあるものを活用した方が効率が上がるらしい。
ものを考えている時に貧乏ゆすりをしたり、理解しようと身振り手振りが出たりと、自然と体が動いていることがある。だから能以外に体を使うと良いらしいことはなんとなく理解できる。だが問題行動と見なされがちな授業中の徘徊行為も、生徒にそれを許したら集中力が上がり、能力も向上した事例があると聞くと驚かされる。
脳はコンピューターのように動くものだ、という思い込みのせいで、正解を導き出すには必要な情報だけを入力すればいいと、私たちは信じきっているのです。
p322
いつの間にか自分が、「じっと座り、頭だけを使って考えるのは、知性の高さの証」と思い込んでしまっていたことに気付かされる。じっと座って学ぶのは良いこと、とされているのは、単に教えやすいからという教える側の都合のためだけなのかもしれない。
体の感覚を敏感に受け取ることができる証券マンはパフォーマンスが高いとか、手話を使って学習すると理解が早まるとか、感覚や動きを活用して能力が上がる様々な事例が紹介されていて興味深い。
それから好みの問題だと思っていたPC作業で使うディスプレイのサイズ問題だが、個人の趣味嗜好は関係なく、人間にとってディスプレイはデカければデカい方がいいというのは意外だった。わざわざ首を捻ってあちこち見る行為もまた、高いパフォーマンスに一役買っているらしい。
体、次に環境、そして最後に他者と、脳の外にあるものの活用法が順番に紹介されていく。自分から外部のものに広げていく構成は間違っていないが、「他者を使う」というのはよくある組織論と同じようなものなので、段々と新鮮味のないものになってしまった。仕方ないことだが、尻すぼみしていく内容になっている。
しかもこの組織を活用する方法は、集団行動が苦手な人にはあまり受け入れたくないようなものが多く、聞かなかったふりをしたくなった。だが皆がアリのように動けば集団の力が最大になるということは理解できる。
また、大勢のデータを同時に取れるようになった実験器具の進歩が、集団での作用に関心を向けるきっかけとなったというのも面白い。それまでは集団を調べられないから個人の中に起こることだけに着目していた。この道具の進歩もまた脳の外で考える手助けになり、人間の能力を上げていると言える。
まずは出来るところから、脳の外のものを活用し、楽してパフォーマンスを上げていきたい。
著者
アニー・マーフィー・ポール
登場する作品
「ザ・ダイニング・ルーム」 A・R・ガーニー・Jr.
「心理学原理(心理学の原理 第一巻(翻訳版))」
「孤独について」 ミシェル・ド・モンテーニュ
ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由
The Power Broker: Robert Moses and the Fall of New York (English Edition)
Master of the Senate: The Years of Lyndon Johnson III (English Edition)
Means of Ascent: The Years of Lyndon Johnson II (English Edition)
「弁論術教程(弁論家の教育 1 (西洋古典叢書 L 14))」
「アルビオンの娘たちの幻想(Visions of the Daughters of Albion (Illuminated Manuscript with the Original Illustrations of William Blake) (English Edition))」
「エルサレム(JERUSALEM (English Edition))」
Write Like a Chemist: A Guide and Resource (English Edition)
The Enigma of Reason: A New Theory of Human Understanding (English Edition)

