★★★☆☆
内容
脳科学の見地から見た本当に痩せる食事法を紹介する。
感想
世の中に様々なダイエット法があり、それにより成功した人はたくさんいるが、その後にほとんどの人がリバウンドすることになる。それは多くのダイエット法が個人の意志力に基づいて行われているが、意志力というものは体力と同じく増減するものなので、疲れた時や弱っているときは誘惑に負けてしまうからだ。そしてタガが外れてズルズルとリバウンドしてしまう。
それならば脳科学を駆使して、出来るだけ意志力を必要としないダイエットを行おう、というのが著者の主張だ。科学的な知見を基にしているだけに説得力はある。そして、まずは脳に悪さをしている食物を排除することが大事だと訴える。それが糖類と穀粉。正直、結局は糖質制限的な事か、と思ってしまった自分がいるが、著者の次の言葉はインパクトがあった。
実のところ、糖類と穀粉に対してはまったくちがう見方をしていただきたいと思っている。人々は糖類と穀粉を食品として考えがちだ。
これらをドラッグとして見るようになっていただきたい。
p68
糖類と穀粉が、どんなに食べても満腹感を感じないようにし、食べ物への渇望を強めているという。意志力が弱ったときにもたげてくる誘惑の原因と言える。これらを絶つことが出来れば、激しい食への欲求に苦しむことがなくなり、正しい食生活を送れるようになるはずだ。
理屈は理解できるのだが、脳の仕組みをうまく活用すれば、好きな物を食べながらでも痩せられる、というのを期待していたので、結構がっかりしてしまった。食は単純にエネルギー補給というものではなくて、文化だったりコミュニケーションの手段だったりするので、そこであまり食べ物を拒否するような行動はしたくないというのはある。
ベジタリアンだったり、宗教的な理由で食べられないものがある人たちは、毎回の食事でしている事ではあるのだろうが、毎度の食事の度にこれは使うなとかお願いするのは結構しんどい。さらにはそういった食事法をしていると語るだけで、なぜか自分の食事を否定されたと勘違いして怒り出す人もいたりして、メンドくさかったりする。まあドラッグを勧められたと思って、断固拒否すればいいのかもしれないが。もしくは糖類と穀粉は悪、という世間の共通認識が出来上がるのを待つか。
本書で紹介される食事法はタンパク質を何グラム、油を何グラムと各食事ごとに決めて行う方法。しかもかなり厳格で、電子計量器を使って1グラムの誤差も許さない。内容は細かいのだが、説明が雑な事もあってこのあたりから、この食事法をやることはないな、という感じで読んでいた。多分ご飯を食べてもいい分、糖質制限よりは悪くないかもしれないが、糖質制限同様に時間と金に余裕がないと難しそう、というのが感想。
ただし、その中で出てくる成功させるコツのようなものは色々と参考になった。ダイエットするときは運動をするべきではないとか、空腹や満腹になっても動揺しないとか。確かによく考えてみると空腹になるとちょっと慌てるところがあるかもしれない。でも今どき、食べ物が手に入らない事などまずないのだから、落ち着いて次の食事まで空腹感を噛みしめていればいいのか。これらのコツを上手く活用しながら、自分なり取り組んでいきたい。著者は絶対そういうのは無理、と言いそうだが。
ところで冒頭で紹介される著者の経歴がすごい。10代の後半にはアルコールやタバコ、ドラッグ漬けになり、そこから何度か浮き沈みして今は大学の準教授。ドロップアウトしたら終わりの日本ではあり得ない経歴だ。それから、ドラッグをやったら中毒になるまでやってしまうような人だから、糖類・穀粉抜きの食事もやり抜けるのでは、と思ってしまった。何でも徹底的にやらないと気が済まない人なのかもしれない。一応は多くの人が試し、大きな成果を収めているようではあるが。
それから、アメリカと日本の食事の内容はかなり違うので、この手の本では、日本でやるならこんな食事を、みたいな情報が訳者などから語られることが多いのだが、この本ではそのようなことは一切なかった。
著者
スーザン・P・トンプソン
登場する作品
「ラルース料理百科事典〈1〉ABAーBOC (1975年)(ラルース料理大事典)」
チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」(合本版)