★★★☆☆
あらすじ
自殺した作曲家の取材のために、イタリアにやって来たロシア人。
感想
セリフは少なく、たっぷりの間を取って描かれる映画。所々にイメージの断片のようなものも挿入され、難解と言ってもいいかもしれない。良く分からなかったというのが正直なところではあるが、シーンによってモノクロだったりカラーだったりする映像はどれも美しい。そして登場する犬がちゃんと思惑通りの動きをしていて感心する。
序盤は特に、ペースがつかめず冗長なシーンの連続に、気を抜くと気絶しそうになってしまうのだが、段々と要領を得て慣れてくる。それでも時々集中力を失いそうになってしまうが。観終わった後に色々とこの映画に言及しているサイトをめぐって見たのだが、見落としていた事が結構あって、本当にセリフで説明をしない、じっくりと見ていないといけない映画なのだなと思い知らされた。
分からないなりに無理やり解釈すると、タイトルからも想像ができるように、望郷の念を描いたものなのだろう。ただ故郷に戻ればそれで解決する類のものではない。故郷を懐かしく思う気持ちというのは、その場所が単純に恋しいというわけではなくて、そこで過ごした無邪気だった幼少時代に惹かれているだけなのかもなと気づかされた。
だから「故郷は遠きにありて思ふもの」なのだろう。きっと本当に帰ったところで心は満たされないはずだ。もはや幼少期には戻れないのだから、それならば希望を求めて前に進むしかない。望郷の念を常に心に抱きながら。
夜中にテレビでやっていたら、途中からでもついつい最後まで見てしまうタイプの映画があるが、これは最後までではなくて、20分くらいはじっくり見てそのままぐっすりと寝てしまいそうな映画だ。最初から最後までしっかり見るつもりなら、体調万全に整えてから臨んだ方がいいだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アンドレイ・タルコフスキー
出演 オレーグ・ヤンコフスキー/エルランド・ヨセフソン/ドミツィアナ・ジョルダーノ/デリア・ボッカルド
撮影 ジュゼッペ・ランチ