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「女殺油地獄」 1992

女殺油地獄  

★★★☆☆

 

あらすじ

 幼い頃は子守もしていたかつての奉公先の放蕩息子と関係を持ってしまった油屋の女将。五社英雄監督の遺作。タイトルの読みは「おんなごろしあぶらのじごく」。

 

感想

 かつての奉公先の放蕩息子が起こす事件の後始末をしているうちに、この男と関係を持つようになってしまった女が主人公だ。乳母的役割だった女性と関係を持つなんて…と思ってしまうが、演じる樋口可南子が妖艶なので分からないでもない。

 

 ただ男を演じる堤真一との年齢差が5歳ほどしかないので、ちょっとリアリティに欠ける。物語の中ではどういう年齢設定だったのかは分からないが、せめて見た目で明らかに年齢差を感じるような配役にした方が良かったように思う。堤真一の演技自体に問題はなかったが、もっと幼い容貌の若い役者の方が分かりやすかったかもしれない。

 

 

 最初は保護者のつもりで男の事件の後処理に奔走していた主人公が、いつどこで女としてのスイッチが入ったのかはよく分からない。だが恐らくは、男と駈落ちした若い女に足を踏まれた時からなのだろう。小娘だと思っていた女にマウントを取られてしまった。彼女への対抗心からスイッチが入り、その後はもう歯止めが利かなくなった。

 

 つまり男がどうこうではなく、女のプライドから始まったわけで、自らも言っていたように、女の怖さを実感する。主人公の心に火をつけた藤谷美和子演じる若い女の変わりようも怖かった。

 

 そんな女たちと比べると、放蕩息子などと呼ばれている男などは可愛いものだ。家に反発して粋がってはいるが、女たちには弄ばれ、純粋なだけで覚悟もない。まるで子供が駄々をこねているだけのようしか見えない。いくら忠告されても女遊びを止めなかったくせに、主人公の夫に妻との関係を断つよう懇願されたらピタッとやめてしまうところなどは、良くも悪くも純情だ。

 

 クライマックスはタイトル通り、油まみれになっての殺人シーンだが、テレビで芸人たちのローション芸を見過ぎたせいか、面白くないコントのように見えるだけだった。でも本来はこの派手な動きが醍醐味なのだろう。浄瑠璃や歌舞伎などで実際に油を使わずに演じれば、確かに面白いものになりそうではある。

 

 五社監督作品と言うと、豪華な役者陣や派手な演出を思い浮かべるが、この映画は役者の数も少なく、色々とおとなしい印象がある。テンポもゆったりとしており、死期を悟っていただろう監督が、これまでとは違う境地でこの作品を撮ろうとしていたのかもしれないなと思ったりした。

 

スタッフ/キャスト

監督 五社英雄

 

脚本 井手雅人

 

原作 女殺油地獄 (夕陽亭文庫)


製作 村上光一/奥山和由

 

出演 樋口可南子

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藤谷美和子/井川比佐志/岸部一徳/長門裕之/石橋蓮司/辰巳琢郎/佐々木すみ江/うじきつよし/松嶋尚美

 

女殺油地獄

女殺油地獄

  • 樋口可南子
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女殺油地獄 - Wikipedia

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