★★★★☆
あらすじ
腕っぷしの強さを買われ、プロアイスホッケーチームの乱闘要員としてスカウトされた男。実際にマイナーリーグの選手として活躍したダグ・スミスの伝記映画。原題は「Goon」。
感想
アイスホッケーの乱闘要員となった男の物語。しかし、非公式という事になっているようだが、ケンカを専門とする選手を雇っているというのはすごい。しかも殴り合いが始まっても、決着がつくまでは審判すら止めようとしないのだから、もはやエンターテイメントの一環として扱われているという事なのだろう。観客もそれを期待し、いざ始まれば大盛り上がりだ。ローマ時代にコロッセウムで剣闘士が戦っていた時代と全く変わらない。野蛮だ。でも人間の野生の本能的なものを刺激するのだろう。分からないでもない。
そんな乱闘要員の主人公は、扱いづらい荒くれ者かと思いきやそんなことはなく、腕っぷしは強いがコーチには従順で、いつも目をキラキラさせているような純真な男だ。意外性があって面白いのだが、でもこういう人は一つ間違えれば裏社会で恐怖の殺し屋となったり、戦時中には残虐非道な軍人になったりするのだろうなと想像すると、ちょっと怖くもある。人間はどこで自分の力を発揮するようになるのかなんて分からない。運次第の所がある。
映画は、愚直に頑張る主人公とそれを馬鹿にする不調の天才プレーヤーの関係を中心に、プレーオフを目指すチームの様子が描かれていく。アイスホッケーに詳しくないのと試合を見慣れていないせいで、ゲームシーンは展開の速さにちょっとついていけない感じはあったのだが、スポーツものらしい高揚感はちゃんと味わえる。クライマックスでは、反目する二人が案外あっさりと和解してしまったなと拍子抜けはしたが、それでもチーム一丸となって戦うというお約束の展開に、ベタだとは思いながらもやっぱり胸が熱くなった。
おバカなコメディかと思っていたら、割と王道のスポーツ映画だった。とはいえ時おり交えられるジョークも下ネタ以外はわりと面白い。特に、所属チームのグッズを彼女にプレゼントするときに、何度もわざわざ「これオフィシャルのやつだから」と強調するのがなんか面白くて笑ってしまった。クマみたいな主人公とぬいぐるみのような女性の恋模様も、似た者同士の二人といった感じで微笑ましい。興行はパッとしなかったがネット配信では好調だったというのも肯けるような、何も考えず気楽に観るには最適の映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 マイケル・ドース
脚本/出演 ジェイ・バルチェル
原作 Goon: The True Story of an Unlikely Journey into Minor League Hockey
出演 ショーン・ウィリアム・スコット/リーヴ・シュレイバー/アリソン・ピル/マルク=アンドレ・グロンダン/ユージン・レヴィ/キム・コーツ/ジョナサン・チェリー
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続編 邦題「俺たち喧嘩スケーター2: 最後のあがき」