★☆☆☆☆
あらすじ
国民のDNA情報を国が管理する社会。犯罪捜査システムを開発した天才科学者は、病院内で起きた殺人事件の犯人と断定され、逃亡を図る。
二宮和也、豊川悦司、杏ら出演、東野圭吾原作。133分。
感想
DNA情報の活用により犯罪捜査が飛躍的に進歩した社会が舞台だ。そのシステムを作り上げた主人公が、殺人事件の犯人にされてしまったことから逃亡者となる。
無実の容疑者が逃亡者となるよくあるストーリーだが、設定も陳腐だ。科学捜査でマウントを取って現場の刑事たちを見下す科学者や、DNA情報を「プラチナデータ」と呼ぶセンスなど、なにかと古臭い。ついでに音楽も大げさで冷める。
犯罪者とされた主人公は、警察の追跡をかわしながら逃亡を図る。だが警察は何度も主人公を寸前で取り逃がすし、最初は機能していた監視追跡システムも途中から存在感がなくなるしで、どうにも都合が良い展開だ。主人公の必死さも伝わって来ず、テキトーなアクションもあって、リアリティの感じられないものとなっている。
主人公が逃亡しながら何をしようとしているのかもよく分からない。俺は犯人じゃないと一生懸命に訴えるわけでもないし、そのために積極的に真相を探ろうとしているわけでもない。これではただ捕まりたくないから逃げているだけの、普通の逃亡犯だ。
主人公はほとんど何もしないが、その間の豊川悦司演じる刑事や杏演じる助手の活躍によって、次第に事件の真相が見えてくる。「真のプラチナデータ」をめぐる陰謀がその背後にあった。だがその詳細が分かっても、何だそんなことかと落胆するだけで、特段の驚きもなかった。
ただこれは、マイナカードを強引に普及させようとしているくせに当の本人である政治家は誰もカードを作っていなかった、みたいなことが日常茶飯事の現在だから何も響かないのかもしれない。実際に大災害を経験した直後にディザスター映画を見ても陳腐に見えてしまうのと同じだ。これが観客に響くと思えていた10年前の日本は、まだいい時代だったということなのだろう。
全衆院議員464人を直撃「マイナカード、持ってる?」大物は回答拒否、推進派が“自分は紐づけせず”の卑怯 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]
事件のあらましがだいたい分かった後は、ウェットな展開が延々と続く日本映画あるあるだった。主人公の二重人格にまつわるエピソードになっているが、あまり彼の二つの人格が分かるように演出されていないので、よく分からないものになってしまっている。最後の30分ほどは無用などうでもいい時間だった。
見どころも新鮮味もない退屈な映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 大友啓史
脚本 浜田秀哉
出演
豊川悦司/杏/水原希子/和田聰宏/遠藤要/中村育二/萩原聖人/鈴木保奈美/菅原大吉/小木茂光/阿部翔平/内田滋/河井青葉/淵上泰史
