★★★☆☆
あらすじ
軍人の父親が駐留する西ドイツで暮らす少女は、同じく徴兵され、駐留していたエルヴィス・プレスリーと出会う。
エルヴィス・プレスリーの妻となったプリシラ・プレスリーの伝記映画。プリシラ・プレスリー原作、ソフィア・コッポラ監督。113分。
感想
エルヴィス・プレスリーの元妻として知られるプリシラ・プレスリーの物語だ。彼女は西ドイツでプレスリーと出会うのだが、大スターの彼に、あまりにも呆気なく会えてしまうことに驚いてしまう。別世界の人間のように見えても、出会う時にはあっさりと出会ってしまうということか。
彼の存在に両親や周囲の人たちが平常心だったのも不思議だが、すでに慣れていたのか、案外とあまり気にしていなかったのか。あるいは有名人の娘だった監督には、スターと会うことの非日常感がよく分かっていないのでは?という穿った見方もできる。
パーティで出会った二人はさっそく恋に落ちるのだが、その時の主人公の年齢にビビってしまう。まだ14歳で、色々と大丈夫なのか?と不安になってしまった。そうだとすると、大人の集うパーティに行かせた両親も、彼女に普通に恋愛感情を示すプレスリーもどうかしているように思えてくる。平然としているようで皆、実は大スターの威光に参っていたということなのかもしれない。
やがて主人公は、兵役を終えてアメリカに戻ったプレスリーの元に引き取られ、そこで高校卒業を目指すことになる。プレスリーはちゃんと両親の了解を得ているし、主人公とも一線は越えておらず、一応は誠実な対応をしているとは言える。だがこれもまた、なかなかすごい展開だ。
主人公にとっては、10代で大スターと一緒に暮らすなんて夢のような出来事だろう。しかし、現実は夢見心地でいられるほど、甘くはなかった。プレスリーは不在がちで、その間は誰にも相手をされずに疎外感を味わい、彼が帰って来れば髪型から服装までを指図され、自由にはさせてくれない。
幸せだけど幸せでないような、なんともジレンマを感じる日々を彼女は過ごす。プレスリーの女だぞと、偉そうにしているのかと思ったのに、片隅で寂しさを感じていたとは意外だった。
そして、普通の女として扱われたい彼女にとって、彼が一線を越えてこないのも不満だったのだろう。これではまるで人形で、人間扱いされていないことがひしひしと伝わってくる。しかも、その裏で彼が女優たちと関係を持っているらしいことが分かれば、なおさらやり切れない。
子供だった主人公が年齢を重ねるにつれ、そんな状況に我慢できなくなるのは当然だろう。次第に二人の間にすきま風が吹き始める。それらを激しい衝突としてではなく、避け合う視線やよそよそしい態度で静かに表現している。二人の結婚式ですら、どこか冷たいものを感じるものになっていた。
あくまでも淡々と展開する映画だ。高度で勇気のいる演出で、うまく成功していると言えるが、地味で物足りなさもある。元々そういうプランだったのだろうが、これはプリシラ本人が映画に関わっていることも多少は影響しているような気がする。やはり自分のことは悪く描かれたくないだろうから、どこかプロパガンダで、綺麗ごとみたいになってしまうのでは?と、勝手に先入観を持ってしまうところもある。
二人の関係に冷めたものを感じながらも、彼の人形であろうとする習慣は消えず、産気づいて皆が大騒ぎする中、黙々と化粧をする主人公の姿が強く印象に残る。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ソフィア・コッポラ
製作総指揮 プリシラ・プレスリー/ロマン・コッポラ/フレッド・ルース/クリス・ハッチャー
出演 ケイリー・スピーニー/ジェイコブ・エロルディ/ダグマーラ・ドミンスク
音楽 フェニックス/サン・オブ・ラファエル
登場する人物
プリシラ・プレスリー/エルヴィス・プレスリー


