★★★☆☆
あらすじ
裕福な男の家に嫁ぎ、子供にも恵まれて何不自由のない生活を送るも、どこか満たされない思いを抱えていた女は、かつての男と再会し不倫するようになる。
感想
主人公の女は、恵まれた環境にいながら家族との関係に問題があって辛い生活を送っているのかと思っていたが、そんなことはなかった。義母が嫌味を言っていじめるわけでも、旦那が冷たくするわけでもない。彼らに問題がないわけではないが、彼女に対して悪意がないことは分かる。ただ主人公が勝手に彼らに遠慮し、気を使い過ぎて窮屈な思いをしているだけだ。いつまで経っても心を開こうとしない主人公に問題があると言える。
そんな暮らしの中で主人公は、かつての男と再会する。躊躇することなくかつて心を通わせた、同じ匂いのする男に走るところを見ると、彼女は今を生きていなかったのかもしれない。そうして始まった不倫だが、主人公が夫にバレないかと冷や冷やするわけでもなく、罪悪感に悩むわけでもないので、不倫の醍醐味というか、不倫映画の面白みはほぼ無い。妻夫木聡演じる不倫相手の男も、最後までミステリアスな存在のままで、人間味がほぼ感じられなかった。
ただ、色味にこだわりを感じる映像や印象的に繰り返し使われる音楽など、静かでとても雰囲気のある映画ではある。
会話を少なくしてモノローグを入れれば、ウォン・カーウァイの映画ぽく見えない事もない。クライマックスで冒頭のシーンへつながっていく展開も良かったが、その後が平凡だったのが残念だ。赤い布が舞い降りてくるまでもなく、最初から主人公は家庭より不倫相手を選ぶ気満々にしか見えなかった。製作側としては、ありきたりな不倫エピソードなんかよりも、いいムードの濡れ場をたくさん用意したのでそれを楽しんでくれ、ということなのかもしれない。
それから主人公を演じた夏帆はなかなか良かったが、なぜか後半は面白い顔をしがちだった。特に実の母に痛いところを突かれた時や、柄本佑演じる同僚に慰められた時に見せたなんとも言えない顔は思わず笑ってしまった。
スタッフ／キャスト
監督／脚本 三島有紀子
脚本 池田千尋
原作 Ｒｅｄ (中公文庫)
出演 夏帆／柄本佑／間宮祥太朗／片岡礼子／酒向芳／山本郁子／浅野和之／余貴美子
音楽 田中拓人
登場する作品
