★★★☆☆
あらすじ
ポルノ俳優として活躍するも落ちぶれて地元のテキサスに戻り、別居していた妻が母親と共に住む家に転がり込んだ男は、ドーナツショップで出会った少女に心を奪われる。
感想
生活に行き詰まり、地元に戻ったポルノ男優が主人公だ。長距離バスから荷物もなく降りて、そのまま妻の実家まで歩き、なんとか丸め込んで家に上がり込む様子は、そんなに?と思ってしまうほどの落ちぶれっぷりで、いきなり苦笑させられた。なぜか謎の負傷までしている。
主人公は真面目に働こうとするが、これまでの経歴がネックとなってまともな職に就けない。それでかつてのツテを頼り、マリファナの売人となる。大きな工場近くの質素な家に住む妻は売春で生計を立てているようで、隣人は元軍人だと偽って小さな商売をしている。主人公らのいる世界は社会の最下層のような場所だが、そこの住人にはそこの住人なりの生き方があり、ちゃんと受け皿もあるのだなと妙なところで感心してしまった。
時おり、彼らの空間に政治ニュースが流れるシーンがさりげなく挿入される。景気がいいのは工場労働者くらいの地方都市で、分断を煽る政治家の言葉はどう響いているのだろうか?と考えさせるような演出だ。テレビで見ることのないアメリカ社会のリアルがひしひしと伝わってくる。
主人公はなにかとうるさい義母を丸め込み、妻も篭絡してリビングのソファーから彼女の部屋で寝るようになる。露骨に嫌な顔をされていた家で居場所を確保していくたくましさは大したものだ。そのまま末永く暮らしていけば、それなりのいい話になったのだろうが、気になったドーナツショップの少女に早速アプローチをするから話は違ってくる。
しかも単に恋愛関係になるのではなく、彼女をポルノに出演させて自身の再起をはかろうと目論んでいるのだからたちが悪い。なかなかのクズっぷりだ。幼い少女をそんなところに引きずり込もうとするなんて酷いが、タレントやアイドルのスカウトをする人たちも同じようなものだ。本人の意思をちゃんと確認しているのなら、他人がとやかく言う問題でもないのかもしれない。
終盤の暮らしも順調、未来の展望も見えてきたところで、主人公はトラブルに遭遇してしまう。最初は詳細が伏せられるので、一体何をやらかしたのだ?と緊張感が高まったが、それが明らかになると、何やってんだよ、と思わず笑ってしまった。笑い事ではないのだが。
だがそんな窮地もなんとかくぐり抜け、これでハッピーエンドに向かうのかと思ったら、また新たなる災難がやってきた。妻たちにひどい仕打ちをしようとしたのだから当然の報いではあるが、その結果全裸で街を走る姿には、何やってんだよ、とまたもや笑ってしまう。
結局、来た時と大して変わらないじゃないか、とツッコみたくなる姿で街を去ることになるのが面白い。それでも少女と共に再起する夢があるだけましなのか。自分勝手で最低なのだが、そのめげないたくましさで必死に頑張る主人公の姿はどこか憎めないものがある。全然自分をあきらめていないのが良い。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/編集 ショーン・ベイカー
出演 サイモン・レックス/ブリー・エルロッド/スザンナ・サン

