★★★★☆
あらすじ
ケガで引退したロシアのバレリーナは、叔父に唆されてハニートラップを仕掛けるスパイとなる。140分。
感想
トップバレリーナからスパイとなる女が主人公だ。ボリジョイ・バレエのメインからとはすごい転身だが、顔と名前が知られているので単純にスパイとしては不利なのでは?と勝手に心配してしまった。有名人としての立場を利用してスパイ活動をするというわけでもない。実際にその後、それでバレてしまう場面もあった。
主人公がスパイとなるために送り込まれた教育機関での訓練シーンはなかなか強烈だ。いわゆるハニートラップ要員を養成する機関なので、やってることがかなりえげつない。国家がやってるからアレだが、民間では絶対に許されないやつだ。人間性を破壊されてマシーンになってしまいそうだ。
ほぼ脅されて仕方なくやってきた主人公は、そんな環境の中でもなんとか自分を保ち続ける。教官は自分を失くせと言っているのにそれでは駄目なのでは?と思ってしまうが、なぜか評価されて実務に就くことになる。こんな環境でも自分をコントロールし続けられるなら、それはそれで良し、ということなのかもしれない。
後半は主人公の実際の任務の様子が描かれていく。彼女が素直に指令に従うのではなく、何かを企んでいるらしいことは分かるがそれが何かは分からない展開だ。彼女が何をしようとしているのか、それを探りながら見守ることになる。スパイ活動の緊迫感に彼女の危うい行動も加わってドキドキとさせられる。そして途中の残虐な拷問シーンは見ているだけでも痛かった。
終盤は少し話がややこしくなってしまったが、クライマックスのワンシーンだけでそれまでのすべてが一瞬で明らかになる演出は見事で、カタルシスがあった。実戦でハニートラップを仕掛けることはなく、すぐにスパイとバレしまうしで、あのえげつない訓練シーンは何だったのだ?と思わなくもないが、ダレることなく終盤まで持っていく推進力があり、緊張感あふれるサスペンス映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 フランシス・ローレンス
原作 レッド・スパロー(上)
製作 ピーター・チャーニン/スティーヴン・ザイリアン/ジェンノ・トッピング/デヴィッド・レディ
出演 ジェニファー・ローレンス/ジョエル・エドガートン/マティアス・スーナールツ/シャーロット・ランプリング/メアリー=ルイーズ・パーカー/ジェレミー・アイアンズ/キアラン・ハインズ/ジョエリー・リチャードソン/ビル・キャンプ/サキナ・ジャフリー/セルゲイ・ポルーニン