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「リングサイド・ストーリー」 2017

リングサイド・ストーリー

★★★☆☆

 

あらすじ

 売れない役者を続ける口ばっかりの男は、失業した同棲中の恋人にプロレス団体の仕事を勧める。

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 永山瑛太、佐藤江梨子ら出演、武正晴監督。104分。

 

感想

 プロレス団体で働き始めた主人公である女と、その恋人の売れない役者の物語だ。まったく興味のなかったプロレスや格闘技の世界に魅了されていく主人公と、成功のきっかけを掴めず、そんな彼女に嫉妬する恋人の様子が描かれていく。

 

 男は役者としての実績はそれなりにあるようだが、大口を叩いて仕事を選んだりしている。だが役者として成功するつもりでいるわりには、Ⅴシネとはいえ準主役級の仕事をドタキャンし、そのくせCMのオーディションは受けたりと、その動きはよく分からない。普通に頑張ればあと少しでブレイクしそうにも思えるが、だから売れないということなのだろう。

 

 

 彼のダメ男ぶりは物語の見どころの一つとなっているが、それがあまり魅力的に描けていない。主人公の財布から金を抜いたり、偉そうに他人の文句ばかりを言ったりするいわゆる普通のダメ人間でしかなく、それでも応援したくなるような憎めない感じはない。「カンヌ映画祭に連れて行ってやる」みたいなことをもっとポンポンと言うキャラであって欲しかった。

 

 なぜか男がリングに上がることになるクライマックスの入場シーンは、彼のキャラが愛嬌のあるものだったらもっと盛り上がったような気がする。デカいことをやりやがった!と快哉を叫ぶのではなく、そんなこともするのかと冷静に見守ってしまうところがあった。そもそもプロレスが大好きだったくせに格闘家にリスペクトがないのも違和感があって、彼のキャラの曖昧さが映画をスッキリしないものにしてしまっている。

 

 ただ、長年夢のために頑張り、それを応援してきたカップルに別れの兆しが見えた時の切なさは胸に来るものがあった。主人公は過去の想い出を振り返りながら、もうこんな気持ちを味わうことは二度とないのだなと、夢の終わり、青春の終わりを噛みしめている。望みが叶わなかった無念さもありながら、夢を見られたことに対する満足感も心のどこかにはある。

 

 そのまま悲しいエンディングになるのかと思っていたが、そうはならなかった。夢はあきらめなければ終わることはない。納得するまでやればいい。

 

スタッフ/キャスト

監督 武正晴

 

脚本 横幕智裕/李鳳宇

 

出演 佐藤江梨子/瑛太/有薗芳記/田中要次/伊藤俊輔/奈緒/村上和成/高橋和也/峯村リエ/武藤敬司/武尊/黒潮“イケメン”二郎/菅原大吉/小宮孝泰/前野朋哉/角替和枝/近藤芳正/余貴美子

 

 

 

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