BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「シェフとギャルソン、リストランテの夜」 1996

リストランテの夜 [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 シェフの兄と共にイタリアからアメリカに渡ってきた男は、レストランを経営するも資金難に陥ってしまい、起死回生の策として有名歌手を招くパーティを開催することを決める。別邦題は「リストランテの夜」。原題は「Big Night」。

 

感想

 腕はいいがこだわりが強く、融通が利かないシェフの兄のおかげでアメリカ人の嗜好に柔軟に合わせることが出来ず、イタリア料理店の経営に苦戦するギャルソンが主人公だ。自分たちがやりたいものと客が求めるものが食い違うことはよくあることではあるが、悩ましい問題だ。

 

 イタリアから移民としてやって来て、アメリカでの成功を夢見る主人公を中心に、その兄や恋人、ライバルレストランの人々らの人間模様がコミカルに描かれていく。ただそのコミカルさがいまいち伝わって来ず、ギクシャクしているだけに見えてしまってあまり笑えなかった。そのせいでずっと、どこか落ち着かない居心地の悪さがあった。これは単純に演出上の問題なのか、彼らの文化を知らないこちらのせいなのかは不明だが。

 

 

 経営悪化するも資金調達に失敗した主人公は、苦肉の策として宣伝のために有名歌手を招くことにする。しかし、すぐ近所の繁盛しているイタリア料理店のオーナーの助言を素直に聞いてしまうとはお人好しすぎる。だが同業の直接のライバルと言えども、異国の地だと助け合い協力し合うべき同胞でもあるので、簡単に敵とみなすわけにもいかないのだろう。移民で成功した先達なので、メンター的存在でもある。

 

 そして有名歌手がやって来る運命の日が訪れる。主人公らは準備を始めるが、合間に酒を飲んだり、女といちゃついたり、馬鹿話をしたりと、あまり彼らに張りつめた感じがしなかったのは意外だった。しかもあまり時間を気にするわけでも、有名歌手がいつやって来るのかとヤキモキするわけでもない。のんびりしていてとてものどかだ。

 

 この一連の準備の様子も、ピンとこないコメディを交えながら描かれていて、見ていていてもあまり気分は盛り上がらなかったのだが、いざ料理が運ばれ始めると一気に楽しくなった。料理はおいしそうだし、皆は楽しそうだし、なんだかこちらまで幸せな気分になってくる。もっとそんなシーンや料理シーンがたくさんあっても良かったのでは?と思ってしまうほどだ。

 

 だがそんなパーティも思わぬ形で結末を迎える。作りたくない料理を作ってまで成功したくない兄と、兄と仲違いしてまで成功したくない弟。互いの方向性が違うことが明確になって悲しくなるが、兄弟愛を感じてしんみりとしてしまう場面でもあった。

 

 そして迎えるエンディング。一夜明け、気まずいながらも肩を並べて朝食を食べ始める兄弟を見ていたら、どんな未来になるにしても二人の仲が決裂することはなさそうだと安心できた。

 

 愛すべき家族や友人に囲まれ、美味しい料理があってこそ人生だ、それが一つでも欠けた人生なんて意味がない、そんな彼らの日々を楽しもうとする人生観が垣間見える映画だった。緊張感が感じられなかった準備シーンもそういうことだったのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 スタンリー・トゥッチ

 

監督/出演 キャンベル・スコット

 

出演 トニー・シャルーブ/ミニー・ドライヴァー/イアン・ホルム/イザベラ・ロッセリーニ/マーク・アンソニー/アリソン・ジャネイ/リーヴ・シュレイバー

 

リストランテの夜 [DVD]

リストランテの夜 [DVD]

  • スタンレー・トゥッチ
Amazon

シェフとギャルソン、リストランテの夜 - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com