★★★☆☆
あらすじ
藩命により長州藩士を討とうとしていた会津藩の男は、戦いの最中に現代の時代劇の撮影を行うスタジオにタイムスリップしてしまう。
時代劇を題材にした作品。131分。
感想
異例の大ヒットをした映画ということで、奇抜で勢いのある作品だろうと想像していたら、とてもオーソドックスな内容だったので驚いた。「相棒」シリーズのような、何シーズンも続いているテレビドラマみたいな安定感がある。老若男女が楽しむにはきっとこのテイストが適しているのだろう。
だがあまりにもどっしりとしているせいで、笑わそうとしているコミカルなシーンもそうだと気付かず、そのまま通り過ぎてしまいそうになる。そしてどのシーンも平等に、ゆったりとしたテンポでじっくり描くので、少々かったるくもあった。
現代にタイムスリップした侍が、時代劇の斬られ役になる物語だ。主人公が「俺はタイムスリップしたのか…」とすんなり理解してしまうのはちょっと面白かった。それから彼があまり現代文明に驚く様子は描かれない。タイムスリップしても、まったく文化の違う国に行ったくらいの感覚で、案外とすぐに慣れてしまうものなのかもしれない。
中盤は主人公が時代劇に魅了され、斬られ役として成長していく様子が描かれていく。このあたりは割と普通だったが、終盤にタイムスリップものらしい展開が待っていた。映画「戦国自衛隊1549」をほんのりと思い出した。
クライマックスは決闘の撮影シーンだ。対峙した二人は斬り合う前に睨み合う。この時のとてつもなく長い間が、決闘の異様な空気感を醸成していた。一気に緊張感が高まる。そこから電光石火で斬り合うチャンバラは見ごたえがあった。最後のオチも良い。
時代劇への愛が感じられる映画だ。しかしなぜ時代劇は見られなくなったのだろうか。西部劇もそうだが、価値観が変わり過ぎてもはや登場人物に共感できなくなってしまったということなのかもしれない。平気で教師が生徒を殴っていた昭和の時代ならともかく、そういうことのなくなった現代では、もはや許容範囲を超えてしまったのだろう。
時代劇と同じように、タイムスリップものというジャンルも廃れてしまうときが来るのだろうかと、ふと思った。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/撮影/編集 安田淳一
出演 山口馬木也/冨家ノリマサ/沙倉ゆうの/峰蘭太郎/紅萬子/福田善晴

