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「さらば愛しき人よ」 1987

さらば愛しき人よ

★★★☆☆

 

あらすじ

 幼馴染みの女性と再会したヤクザの男は、組同士の抗争に巻き込まれていく。

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 郷ひろみ主演、石原真理子、木村一八、佐藤浩市ら出演。原田眞人監督。103分。

 

感想

 ヤクザの主人公の対立する組織との抗争と、再会した幼馴染みとの恋愛が描かれる。

 

 抗争は、主人公が暗殺しようとした敵の会長を温情で見逃してやったことから激化したので、自業自得だと思わなくもない。やり返されるのは目に見えていたが、会長にとどめを刺したところで別の誰かが報復するだろうから、結局は同じだったのだろう。

 

 

 主人公の情けは、その前の雀荘での五本指のエピソードが伏線になっているが、これも含めてどこかハードボイルドな雰囲気が漂う物語だ。主演の郷ひろみもスマートな佇まいをしているので、やくざ映画というよりもアメリカ的なギャング映画を思わせる。

 

 キャストも独特で豪華だ。思わぬところで原田芳雄や大竹まことらが登場するのが楽しい。なかでも見た目は普通の警察官なのに、やばい雰囲気をプンプンと漂わせている内田裕也は、異様な存在感を放っていた。

 

 中盤くらいまではほどほどの印象だったが、その後はクライマックスに向けて盛り上がっていく。拷問されて自ら命を断つ元愛人や主人公に失望してヒロインに襲いかかる弟分など、それぞれの人間模様が丁寧に描かれる。

 

 主人公が敵陣に乗り込むのがクライマックスだ。やくざ映画の定番だが、主人公だけでなく他の人物も独自の動きをするのが面白い。彼らは組織の論理ではなく自らの矜持に従っていて、これもどこかアメリカっぽい。

 

 それまでずっと不気味な存在だった佐藤浩市演じる男との一騎打ちもある。全然知らなかったが、劇中の彼の「チャカとダンピラ(刀)、どっちが強いと思う?」というセリフは、ネットミームになっているらしい。

 

 確かに今とは店舗デザインの違うファミリーマートで繰り広げられる一連のシーンはインパクトがあった。金髪でかすれ声の男が刀を手に、陳列商品が倒れるのも気にせず、木村一八演じる弟分に迫る。ただ、直接対決は思っていたよりもあっけなく終わってしまった。

 

 そして佳境で見せる高品格演じる会長のしたたかさには痺れた。それまでは取り立てて何もしていなかったのに、修羅場で肝の据わったところを見せ、全て自分たちの都合が良いように収めてしまった。若い主人公の真っ直ぐさとはまた違った、生き残りだけが持っている老獪さの魅力だ。

 

 幼馴染みとの恋愛はそれほどでもないが、終盤の抗争のドラマで盛り上がり、いい余韻に浸れる。独特の雰囲気を持ったやくざ映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 原田眞人

 

製作 奥山和由/周防郁雄

 

出演 郷ひろみ/石原真理子/木村一八/南條玲子/嶋大輔/高品格/笹野高史/安岡力也/大地康雄/余貴美子/内藤陳/景山民夫/松金よね子/大竹まこと/内田裕也/寺島進/不破万作/佐野史郎/手塚真

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音楽 中西俊博

 

さらば愛しき人よ (映画) - Wikipedia

 

 

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