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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「さらば、シェヘラザード」 1970

さらば、シェヘラザード (ドーキー・アーカイヴ)

★★★★☆

 

あらすじ

 締め切りが迫るもなかなか筆が進まず、焦るポルノ小説のゴーストライター。タイトルのシェヘラザードは、「千夜一夜物語」の登場人物で語り手である女性から取られていく。

 

感想

 普通に小説が始まったかと思いきや、第一章が終わった後にまた第一章が始まって戸惑わされる。これはゴーストライターである主人公が書いている小説の原稿という体裁を取ったメタフィクションだ。とにかく原稿を埋めるために思いつくままに書いてみたものの、結局ボツにして再度書き直すからまた第1章の数字が付されたわけだ。

 

 最初はちゃんとポルノ小説を書こうとしているのに、すぐに問わず語りの自分語りになってしまうのが面白い。それだけポルノ小説を書くことにうんざりしているということだろう。書くべきものの代わりに書き綴られた文章から、主人公がゴーストライターになった経緯やどんな人生を送って来たのかが明らかになり、そして現在進行形で起きていることも知ることが出来る。

ルビーの指環

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 主人公がこの仕事を始めたのは、大学院に行くための資金を稼ぐためだった。思った通りの高収入を得られていたのに、予定通りに資金が貯まったかといえば答えはノーで、こんなはずじゃなかったと頭を抱える主人公には笑ってしまったが、気持ちはよく分かる。簡単にお金を得られるようになってしまうと、簡単にお金を使うようになってしまう。世間体の良い仕事ではないからと、サッと大金を稼いでサッと手を引くつもりだったのに、ズルズルと続けて抜け出せなくなってしまった、なんて話はよく耳にする。

 

 

 ドツボにはまった主人公の、どんどんと状況が悪化していく様子が描かれていく。小説の形式自体もそうだが、話の構成や語り口、進行の仕方がアイデアに溢れていて感心してしまう。また、物語の作り方やページ数を稼ぐ方法などのテクニックも語られていて、後に巨匠となった人気作家の創作手法が垣間見られるのも興味深い。しかものそのテクニックを実際にこの本の中で披露しているのがニクい。思わずニヤリとさせられる場面も多く、著者の懐の深さや幅の広さに唸ってしまった。

 

著者

ドナルド・E・ウェストレイク

 

 

 

登場する作品

輪舞

ケイン号の叛乱 (字幕版)

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「ニグロの知性の危機(The Crisis of the Negro Intellectual: A Historical Analysis of the Failure of Black Leadership (New York Review Books Classics))」

「夜の街」

「ナンバーズ」

「シーパー」

「フリーウィーリン・フランク(Freewheelin' Frank)」

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Bartleby―バートルビー

草の葉―ホイットマン詩集 (岩波文庫 緑 36-9)

赤い武功章 他三篇 (岩波文庫 赤 317-1)

武器よさらば(上) (光文社古典新訳文庫 Aヘ 1-1)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

「批評家のおすすめ(CRITIC'S CHOICE)」

「苦役の果てに忘れられ(Treadmill to Oblivion)」

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「仕事場の作家たち(ライターズ・アット・ワーク)」

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「夢見るお年頃」

 

 

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