★★☆☆☆
あらすじ
日本最大の暴力団組織の組長が狙撃され、緊張感が高まる界隈。140分。
感想
組長が襲撃されて始まる冒頭といい、勇ましいタイトルといい、ギラギラとしたヤクザの抗争が始まるのかと思いきや、案外とあっさりとした物語だったので肩透かしを食らってしまった。一応抗争らしきものは描かれているが雰囲気だけで、それよりも組長の妻を中心としたカタギの家族たちの姿がメインで描かれている。
「ゴッドファーザー」を意識しているのだろうことはよく分かるが、こちらは全然面白くない。家族の話をメインにしているくせに、それほどしっかりとそれぞれのメンバーを描写しておらず、どれも話が薄っぺらい。ヤクザの家に生まれた苦悩や葛藤はあまり感じられず、わりとみな普通に生きているような印象だった。
しかし、父親がヤクザの大親分でしかも撃たれて騒然としている最中に、平然とその娘をデートに誘う一般人男性がいることがすごい。昔の人はヤクザを恐れていなかったのか、カタギのことに口を出すはずがないというヤクザに対する信用があったのか。
この映画の最大の問題点は、肝心のゴッドファーザー、組長がまったく魅力的な人物ではなかったことだろう。ヤクザを束ねる独自の哲学を披露するわけでもなく、豪胆な手腕を見せるわけでもない。何があってもただ黙ってサッポロビールを飲んでいるだけのような、つまらないキャラクターだ。威厳はあるが家族に蔑ろにされがちな、古き良きの昭和の時代の父親を体現している。
せめてそんな理想像を持ちながら、それをなかなか実行できない人間味のある人物であれば良かったのだが、ヤクザのトップに立つような人物だし、演じるのは三船敏郎だしでそれを完ぺきにこなしてしまっており、まったく面白みがない。存在感だけは人一倍あるだけに、余計それが強調されてしまってまるで置物のようだった。
そんな彼とは違い、若山富三郎演じる組長は、しがらみにがんじがらめになって苦悩する姿がしっかりと描かれており、人間臭さのある魅力的な人物になっていた。
その他、菅原文太や小林旭など、色々と期待してしまうような豪華な役者陣が出てくるにもかかわらず、中途半端なストーリーが延々と2時間半近くも続くのはつらかった。しかも必死に耐えながら見て、ようやく面白そうな展開が来た!、と身を乗り出した次の瞬間にエンディングが始まってしまったのには、えーっ!と声が出てしまった。その続きが見たかった。
組長の妻の艱難辛苦の道は終わらない、という筋立ては分かるのだが、2時間半も忍耐を強いておいてその仕打ちは酷だろう。普通サイズの映画であればそこまで印象は悪くならず、続編を見たいと思ったかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 中島貞夫
脚本 西沢裕子
原作 制覇
出演
岡田茉莉子/菅原文太/名高達郎/中井貴恵/秋吉久美子/松尾嘉代/梅宮辰夫/清水健太郎/にしきのあきら/大信田礼子/高岡健二/加山麗子/舟倉たまき/桂小つぶ/小沢象/宮内洋/草薙幸二郎/今井健二/鹿内孝/待田京介/寺田農/曽根晴美/品川隆二/岸田森/小池朝雄/小林旭/若山富三郎/鶴田浩二/菅田俊