★★★☆☆
あらすじ
浪人の父と長屋で暮らす若い娘は、時々やってくる汚穢屋の青年に思いを寄せるようになる。
黒木華主演、寛一郎、池松壮亮、佐藤浩市ら出演。阪本順治監督。キネマ旬報ベスト・ワン作品。89分。
感想
映画冒頭からいきなり肥溜めのシーンで戸惑ってしまうが、江戸の町で糞尿を買い取り、郊外の農村に肥料として売る汚穢屋の若者と、長屋の武家の娘の物語だ。だからずっとそんな感じで糞尿にまつわる話が繰り広げられる。モノクロ映像で中和しているのが救いだが、その点ではだいぶきつかった。
浪人の娘である主人公が暮らす長屋の厠にまつわるエピソードと、汚穢屋である若者二人の働く様子が描かれていく。町の人々は臭いだのなんだのと言いながらも、そこまで拒否感が見られないのが印象的だ。それはそういうものだからと受け入れている。考えてみればこれが本来の自然の姿で、そういうものを感じられずに済む現代の方が特殊なのだろう。
最初は汚穢屋に引いていた若者が、金に釣られて仕事に加わった途端にまったく気にしなくなったように、現代だって災害や戦争で水洗便所が使えなくなれば、案外皆あっさりと適応してしまうような気もする。
長屋から運ばれた糞尿は農村で畑にまかれ、大根となって戻ってくる。人間も死ねば土に還り、大地の恵みとなる。すべてはグルグルと循環していて、自分はその中で一時的に形作られた存在でしかない。そんな奇跡のような出来事なのだから一瞬一瞬を大事にして、伝えたいことは必ず伝えておいたほうがいい。そうでなければあっという間に時が過ぎ、壮大な自然のサイクルの中に飲み込まれてしまう。
武家の娘がわざわざ汚穢屋に恋をするかなと思ったが、職業や身分にか関わらず、人は誰しも上から入れて下から出す同じ生きものだ。上も下もない、というメッセージも込められているのだろう。江戸の知らなかった部分を垣間見られるのは興味深いし、若い二人の恋物語も初々しい。佐藤浩市と寛一郎の親子共演も見どころだ。
この題材から、すべてのものはつながり循環している、という壮大な世界観が立ち上ってくるのはすごいが、題材が題材だけにあまり想像力が豊かだとサウンドとビジュアル的にしんどいかもしれない。食事の前は避けるなど、見るタイミンをちゃんと考えないといけない映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 阪本順治
出演 黒木華/寛一郎/池松壮亮/眞木蔵人/石橋蓮司
音楽 安川午朗
撮影 笠松則通

