★★★☆☆
あらすじ
紀元前3世紀・戦国時代の中国。自身への暗殺を企てさせ、燕国に攻め入る口実を作ろうと、幼馴染の女性を送り込んだのちの秦の始皇帝・政。
感想
ごりごりのCGをふんだんに使って、テカテカの映像を見せつけがちの昨今の中国映画に辟易していた自分にとっては、この20年前の人海戦術でアナログに作り上げた少々粗い画質の大作は、泥臭さを感じてグッとくるものがあった。この感じをデジタルで出すのは大変そうだ。最近のスターウォーズはそれに近いものが出来ていると思うが。
のちの秦の始皇帝が、怒り方だったり幼馴染の女性に会う時だったりに、とても子供っぽい行動をするのが意外だった。中国を統一した人物だからもっと堂々としたつけいる隙のないような男だろうと勝手にイメージしてしまうが、きっと最初からそんな男だったわけではない、という事なのだろう。数々の修羅場をくぐり抜け、様々な経験を通して次第に風格を身につけていったはずだ。映画でもそんな風に少しずつ変化していく始皇帝の姿が描かれている。
さらには幼少期に人質として暮らした屈辱と根強い恨み、身勝手な母親の行動に対する複雑な思い、自分の出自に関する疑念など、始皇帝の人柄を浮かび上がらせるような様々なドラマが描かれていて、見ごたえがある。ただ鑑賞中に、時間と共に徐々に一点に集中していく最大の関心事は、これいつ終わるの?という事。途中からは、たびたび残り時間を見ては、え、まだ1時間以上もあるの?とため息をついていた。心が折れそうになるくらい長い。166分。
ただ、映像もストーリーもしっかりとしていて、つまらないというわけではないので、きっと問題は「キングダム」程度の歴史知識しか持ち合わせていない自分にあるのだろう。暗殺を描くだけだったら反乱だったり、出自の話はいらないのではと思ってしまったが、これらは史実に基づいた話。
この始皇帝に関する様々な話は、中国では常識のようなので、中国人やこの辺りに詳しい人の中には、これでも十分に描けていない、時間が足りないと思う人がいるのかもしれない。きっと大河ドラマと同じように、歴史に詳しければ詳しいほど楽しめる映画なのだろう。あのエピソードをそういう解釈で描くのか、とニヤリとしたりして。
実際に、あとで映画の中の人物や出来事を調べてみたら、確かになかなか面白くて、興味が出てきた。「傍若無人」の語源は、この映画で出てくる暗殺者「荊軻」から来ているとか、始皇帝の母親の話とか。
もうちょっと中国の歴史に詳しくなってから見ると、また感想も変わりそうだ。ただ最後の暗殺シーンは、暗殺の名手とか言ってたくせにしょぼすぎて残念だった。これまた史実通りなのかもしれないが、ハードルを上げ過ぎた感はある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 チェン・カイコー
出演 コン・リー/チャン・フォンイー/リー・シュエチエン
登場する人物
始皇帝/荊軻/燕丹/樊於期/嫪毐/呂不韋/趙姫/高漸離/秦舞陽