★★★☆☆
あらすじ
巨人の侵入を防ぐために巨大な壁で囲まれた街。長きにわたる平穏な日々の後、再び現れ人々を襲い始めた巨人たちを倒すために、幼なじみと共に兵団に入隊した男。98分。
感想
映画の出来が酷いと噂だったのでビクビクしながら見たが、全然普通で安心した。ちゃんと原作を読んだり、アニメを見たりしておらず、内容をなんとなく知っている程度の知識しかない状態で見たからだろう。間違い探しをする必要がなく、純粋に一つの物語として楽しめた。原作やアニメに思い入れのある人だと、たくさん気になる点が出てきてしまうのかもしれない。
個人的にはむしろ映画がとてもアニメ的なのが気になってしまった。冒頭の雑踏の音やアフレコ感あふれるキャラクターの声などがとてもアニメぽい。それに食いしん坊や力持ち、キザな隊長など、キャラクターの造形もいかにもアニメだ。せっかくの実写化なのだから、漫画やアニメのらしい表現を実写のリアルな世界観にどう落とし込むのかが見たかった。
なかでも滑り気味の石原さとみは見ているのがつらかった。一生懸命にコスプレして似せようとしている人みたいで、やってる本人は楽しそうで何よりだが、そのキャラになんの思い入れもないこちらとしては、なんでそんなものを見せられなければいけないのだと軽い憤りを覚えてしまった。
ただネットでは、キャラの再現度が高いと彼女の評価は高かったようなので、案外漫画やアニメの各シーンをコスプレして完全再現し、それをつなげた映画にするだけで、皆を満足させることができたのかもしれない。原作は映画化するほど面白いのだから間違いないだろう。だがそれだと「面白い」ではなく「似てる」と喜ばれるわけだから、作り手としてはやりがいがなさそうだが。
あるいは最初からはっきりと漫画やアニメとは別物だと分かるスタイルで作るか。個人的には、もっと特撮感を全面に押し出したら面白くなったような気がする。この映画では中途半端に漫画やアニメに寄せてしまっている。
ストーリー的には問題なかったが、いかにもスケールの大きな映画になりそうなのに、全くと言っていいほど映像的にスペクタル感がなかったのが残念だ。もうちょっと寄るか離れるかして欲しいと思ってしまうような、ちょうど駄目なカメラの位置で、巨人たち対人間というダイナミックな対比が感じづらかった。それに主人公らが装置を使って空中を自由に動き回るシーンも、まるで通常運転とでもいうかのように当たり前に描かれてしまって迫力も爽快感もない。CGを作るのに精いっぱいで、構図やカットをちゃんと考える余裕がなかったのだろうか。
それから、壁や建物が崩され、瓦礫が次々と落ちてくる中を主人公らが動き回るシーンが多いので、ヘルメットをかぶった方が良くないか?とヤキモキしてしまった。これは「*映画上の演出です」というやつなので気にしてはダメなのだろうが。
前編後篇の二部構成の映画だが、ちゃんと単独の映画として完結しており、なおかつ後篇も気になる構成となっている。熱望するほどではないが、続きも見ようかなとは思わせてくれる映画だった。上映時間がコンパクトなのも好感が持てる。
スタッフ/キャスト
監督 樋口真嗣
脚本 渡辺雄介/町山智浩
出演 三浦春馬/長谷川博己/水原希子/本郷奏多/三浦貴大/桜庭ななみ/松尾諭/石原さとみ/ピエール瀧/KREVA/水崎綾女/武田梨奈/高橋みなみ/諏訪太朗/橋本じゅん/仁科貴/デモ田中/ジャスティス岩倉/三島ゆたか
音楽 鷺巣詩郎
編集 石田雄介
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後篇
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