★★★☆☆
あらすじ
強盗殺人事件の容疑者を起訴した検事は、事件関係者でもある弁護士の男から執拗に疑念を述べられたことから再調査を始める。
小林桂樹、仲代達矢、井川比佐志ら出演、橋本忍脚本。113分。
感想
単純に見えた事件を再調査することで、新たな事実が浮かび上がってくる物語だ。しかし、冒頭ですでに弁護士の男が被害者女性を絞殺するシーンが描かれているので、真犯人が誰なのかを推理するわけでもなく、どこに面白みを感じて見ればいいのか分からないところはある。
主人公である検事がちゃんと真実にたどり着けるのか、あるいは弁護士がなぜ犯行に至ったのか等に注目すればいいのかもしれないが、大体のあらましは既に分かっているし、それ以外も予測が付きそうなものばかりなので、物語の推進力としてはかなり弱い。
犯行後にたまたまやって来た空き巣に運よく罪を被せることが出来た弁護士が、主人公と対決する姿勢を見せたらまた違ってくるのだが、逆に「犯人は他にいるのでは?」と主人公に再調査を促してしまっている。せっかく罪を逃れられそうなのに何をやっているのだと思ってしまうが、これこそが本作が描こうとしていることなのだろう。
弁護士の良心の呵責、主人公が貫く正義、体面を気にして真実をもみ消そうとする検察の態度、そして手のひらをくるくる返す気まぐれな大衆と、事件に対する人々の反応が浮かび上がってくる。社会派サスペンスだ。
中でも、長年死刑廃止を訴えてきたベテラン弁護士が、自分の妻が殺されても態度を変えず、容疑者の弁護を務めようとするのは一貫していて感心する。一方で、死刑となっても全く動じることなく、平気な顔をしている容疑者の気持ちはよく分からなかった。彼は投げやりになっていたが、生きるのに疲れ果てるほど苦しい生活を強いられていた、ということだろうか。
最後には、ちょっとした驚きの展開が待ち受けている。だが、それは冒頭にちらっと頭によぎったことだった。それに弁護士は、殺人未遂には問われるはずなので、無罪放免になるのはおかしいだろう。
それから、主人公の妻が言っていたように、より詳しい真実が明らかになったのだから有意義だったと思うべきなのに、余計なことをしやがってとばかりに左遷されてしまう主人公は気の毒だった。
過ちに気付いたら即座に正す。これは称賛されるべき立派な方針であるはずだ。それなのに、ミスに気付くことは悪、正そうとしたら裏切り者と見なすかのような扱いをする日本の官僚組織には闇しか感じない。そして、この時代から半世紀以上が過ぎた現代においても、その体質が全く変わっていないことにげんなりする。
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スタッフ/キャスト
監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
製作 佐藤一郎/椎野英之
出演 小林桂樹/仲代達矢/井川比佐志/乙羽信子/大空真弓/千田是也/東野英治郎/西村晃/浜村純/菅井きん/東野英心/淡島千景/松本清張*/大宅壮一*
*特別出演
音楽 武満徹
