★★★☆☆
あらすじ
思春期を過ぎると成長が止まり、永遠に生き続ける「キルドレ」として生まれたパイロットは、新たな転属地に赴任する。
森博嗣の小説シリーズを押井守監督が映画化。声優は菊地凛子、加瀬亮、谷原章介ら。122分。
感想
時代も場所も定かではない世界で続く戦争で、戦闘機のパイロットをする男が主人公だ。彼が仲間と共に戦う様子や、日常を過ごす様子が描かれていく。だが戦争映画でありがちな勝利の高揚感や仲間を失う悲しみといった感情の起伏はほぼ見られない。何が起きても淡々としている主人公らの姿が印象的だ。
そして最初は全然気づかなかったのだが、主人公らパイロットは、思春期が過ぎると成長が止まり、永遠に死なない「キルドレ」として生まれた人々であることが分かってくる。上官の女性指揮官にまつわる不穏な噂や、彼らの妙に冷めた態度も、それに起因しているようだ。
終盤に、それらも含めたこの映画の世界観の全貌が、くっきりとではなく、ぼんやりと浮かび上がってくる。だから国ではなく企業同士が戦っているのかとか、戦局のバランスを取ろうとしているような発言があったのかとか、敵側に移籍したりするのかなど、映画を見ながらどこかひっかかりを覚えていた部分の謎が解けた。驚くというよりも「なるほど」と興味深い。
今も世界のどこかで戦争は行われているが、確かに人類はどこかで戦争を求めているところがあるかもしれない。隣国の脅威や軍事力増強の必要性を語る人々は、どこか恍惚とした表情をしている。また、SNSなどを見ていると、軍人(自衛隊員)に「ご苦労様です」とねぎらいの言葉を掛けたがる人がめちゃくちゃいることに驚く。別にいいのだが、社会を支えているコンビニ店員や交通警備員にもちゃんと感謝の意を伝えているのかと気にはなる。
退屈に感じてしまうほど戦争が日常的になっている世界で、仕方がないと従順になるのではなく、抗うことで少しでも世界を変えようとする姿勢は大事だ。そんなメッセージが伝わってくる。
全貌を知ってしまうと都合の良い世界だなと思わなくもないが、淡々とした中で時々起こる戦闘機の空中戦は臨場感があって見応えがあり、各キャラクターも魅力的で、ダレることなく楽しめた。なぜかプリプリしながらプレーする、ボーリング場での女性指揮官の仕草は面白くて好きだった。
スタッフ/キャスト
監督 押井守
脚本 伊藤ちひろ
原作 新装版 スカイ・クロラ The Sky Crawlers (中公文庫)
出演 菊地凛子/谷原章介/山口愛/平川大輔/竹若拓磨/麦人/大塚芳忠/安藤麻吹/兵藤まこ/西尾由佳理/ひし美ゆり子/竹中直人/榊原良子/栗山千明
音楽 川井憲次

