★★★★☆
あらすじ
誰にも恋愛感情を持てない30歳の女は、周囲の恋愛や結婚に対するプレッシャーを疎ましく感じている。
三浦透子、前田敦子、坂井真紀ら出演。104分。
感想
他人に恋愛感情を抱けない30歳の女が主人公だ。冒頭は男女4人の合コンから始まるが、恋愛トークを頑張る女友達を横目に、食べることに専念している主人公が面白い。ハズレの合コンなのか、他人に興味がないのか、どっちなのだろうと思っていたのだが、映画の話題になると俄然、前のめりで話し始めたので驚いた。彼女は、他人ではなく恋愛話に興味がなかったのだなと、後で気付いた。
そして普段、人々がいかに当たり前のように恋愛話をしているのかにも気付かされる。特にこの年代はそうだろう。それが彼女のような人間にはよく分からない。まったく関心のない趣味の集まりに紛れ込んでしまったような気持ちかもしれない。だが恋愛は、世界中のほとんどの人が共有する関心事なので、そこから逃れることもできない。
主人公は、誘われれば一緒に出掛けるような、一般的な社交性を持ち合わせた女性だ。皆が友だちとして付き合ってくれるなら普通に楽しく毎日を過ごせるのに、相手が男性だと、どこかで恋愛要素が持ち込まれ、勝手に気分を害されたりして落ち込むことになる。今は恋愛に興味がないとか言っている男だって、ポーズだけで実際はそうでなかったりするから、ますます面倒くさい。
事前に説明しようとすれば、相手が自分のことを好きな前提みたいになってしまうから変な感じになる。彼女の抱える生きづらさが伝わってくる。
主人公が、自分はこういう人間だからと開き直れず、「普通」を求める社会で肩身の狭い思いをしながら生きているのがリアルだ。世の中には自分のような人間もいるのだと、理解を求めることが出来れば素晴らしいが、普通でないならいちいち声を上げなければいけないのだとしたらしんどいし、誰もが出来ることでもない。だから、世の中にはいろんな人がいるという前提で、わざわざ何かを言わなくても、誰もが平穏に暮らせる社会であることが理想だろう。
そして社会には、県会議員を目指す友人の父親のように、マイノリティーが声をあげることをなぜか嫌う人々もいる。彼が何度か「そんなことをするとアレだから」みたいに、ちゃんと具体的な説明が出来ずにごまかしていたのが印象的だったが、そんな人たちのもっともらしい意見も、よく聞けば雰囲気だけで、「とにかく私は気に入らない」と感情論にしか過ぎないことを言っているだけだったりする。
ただ、実際に一番厄介なのは、主人公の母親のような、世の中の当たり前を疑わない人々だろう。無邪気に自分の当たり前を世界の当たり前と信じ込んでいるので、悪意なく他人を傷つけるし、傷つけていることにすら気付かない。自分を疑わない人の考え方を変えていくことが何よりも難しい。
あることがきっかけで一家だんらんの場が修羅場と化し、主人公が言えなかったことをぶちまけるシーンは印象的だ。そして、この場面がどこかコミカルだったのは味わい深い。修羅場とは、本人たちは真剣でも、第三者から見れば滑稽だったりするものだ。人間味あふれるシーンとなっていた。
どうせわかってもらえないと思い悩みながらも、それでも自分らしく生きる方法を模索する主人公の姿に心強さを感じる。劇的ではないかもしれないが、その日々の積み重ねが少しずつ世の中を変えていく。それに気づいて、走り出したくなることもある。爽やかな余韻に浸れる映画だ。エンディングに流れる曲も良かった。
スタッフ/キャスト
監督 玉田真也
脚本 アサダアツシ
製作 石川真吾/柴原祐一
出演 三浦透子/前田敦子/伊藤万理華/伊島空/前原滉/前原瑞樹/浅野千鶴/北村匠海*/田島令子/坂井真紀/三宅弘城
*友情出演
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