★★☆☆☆
あらすじ
遺伝子エンジニアの科学者カップルは、倫理的に禁止されている人間と他生物のDNAを結合させた生きものを誕生させてしまう。
エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー出演。104分。
感想
人間と他の生物を掛け合わせたクリーチャーを生み出してしまった科学者のカップルが主人公だ。前段階の他の生物どうしを掛け合わせたクリーチャーも気持ち悪かったが、これも気持ち悪い。
好奇心から倫理を踏み外してしまった二人だが、その対応は対照的だった。男はすぐに殺処分しようとするが、女は育てようとする。だが最終的には女の意見が勝ち、二人でクリーチャーの成長を観察することになる。
この経緯自体もそうだが、その後のクリーチャーの面倒を見る様子は、そのまま子育てのメタファーだ。グズられて困惑し、成長を発見して喜ぶ。二人がそんな感情に気付きながらも、あえてクリーチャーを「子ども」と言わないように気をつけているのが印象的だ。なんとか「ペット」と表現するにとどめている。
ただ、二人の「子育て」の様子は、取り立てて面白みはない。見つかってはいけないという緊張感は若干あるが、それ以外は普通の子育てと一緒だ。もうちょっと普通じゃない感じとか、このまま成長するとヤバいかもと思わせる何かを時々出して欲しかった。冷や冷やがない。
クリーチャーがシンプルに気味悪いというのも影響している。キモ可愛い的な要素があれば、それこそペット動画を見るような感覚で楽しめたのかもしれない。ただ個人差があるので、これを可愛いと思える人もいるのだろう。
成長の早いクリーチャーが大きくなると、少し様相が変わってくる。種を残すための動物的本能が頭を出す。だが、さすがに気味が悪いのであり得ないと思っていたのに、男が応じてしまったのには驚いた。彼はこのクリーチャーを可愛いと思える側の人間だったということなのだろう。
その後クリーチャーは女にもアプローチする。ずいぶんと念入りで、謎の生物と関係を持つ感覚を男女どちらの観客にも体験させたかったのだろうか。フィクションなのでなんとも思わなかったが、海外のレビューを見ているとこれに拒否感を示す人が多いようだ。獣姦ととらえるのか、宗教的な禁忌に触れるのだろう。ちなみにこの時、クリーチャーがバサッと羽根を広げるのが笑える。
倫理観に訴えかけ、人間の都合で生まれてしまった生き物に対する同情を呼び起こしたかったのだろう。監督は「フランケンシュタイン」をイメージしていたようだが、全然思い浮かばなかったし、そんな感情にもならなかった。冷静さを失った科学者を冷静に観察してしまうだけの映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案 ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本/原案 アントワネット・テリー・ブライアント
脚本 ダグ・テイラー
製作総指揮 ギレルモ・デル・トロ/スーザン・モントフォード/ドン・マーフィ/クリストフ・ランデ/イヴ・シェヴァリエ/ジョエル・シルバー/シドニー・デュマ
出演 エイドリアン・ブロディ/サラ・ポーリー/デルフィーヌ・シャネアック/デヴィッド・ヒューレット
撮影 永田鉄男


