★★★★☆
あらすじ
夏休みの水を抜かれた高校のプールに、水泳部員の二人と補習で呼び出された二人、四人の女子生徒が集う。
山下敦弘監督。高校演劇の戯曲を映画化。87分。
感想
水を抜かれたプールに集まった女子高生4人による物語だ。原作が舞台劇だけあって、ほぼこのプールだけで繰り広げられる会話劇だ。映像的にあまり動きはないが、飽きることなく全然見ていられる。「水のないプール」という場所にすごい力があり、そこで何かやるだけで、なんでも通常の何割増しか魅力的になってしまうような気がしないでもない。映画で割とよく見る場面だ。
最初はなんでもないような会話が続くが、阿波踊りの話題が普通に出てくるのが徳島らしくていい。「よく分からないけど」とか言いながら皆が普通に踊れて、普通に語れる。その解像度の高さが面白い。ローカルな文化がしっかりと根付いていることがよく分かる。
時間が経つにつれ、次第に彼女たちの心にわだかまっている問題が明らかになってくる。それはこの年代ならではの、「女」という自らのアイデンティティーに関する悩みだ。今まで男子と同じように過ごしてきて、彼らに勝ることだってあったのに、成長と共に体に変化が生じ、これまで通り男子と同じように過ごすというわけにはいかなくなってきた。
彼女たちはそんな変化に戸惑い、理不尽だと憤ったり、これまで通りでいようと頑張ったり、逆にそれなら女らしさを追求してやろうと舵を切ったりしている。女子にはそんな悩みがあるのかとちょっと驚いてしまったが、それこそが、野球部がたてる砂埃が知らず積もらせたプールの砂が暗示するものなのだろう。男子は無意識に成長しただけなので、その裏で女子が戸惑っていることには気付きもしない。
彼女たちは、戸惑いに対する対応の違いから衝突する。女らしさに振り切ることにした一人の女子の決めつけ口調に皆が押され気味だったが、結局問題の本質は、男子と女子の違いではなく、個人の違いだからなのだろう。女子はどう生きるべきかではなく、一人の人間として自分はどう生きるべきかというのが命題だ。女子の中でも道はいくつもに分かれていく。もはや誰も皆と一緒ではいられない。
女子高生たちを監督する女教師も登場する。彼女は、同じような問題を乗り越えてきた先輩の女性として意見を述べる。彼女たちの年頃を過ぎても、女性ならでは悩みは絶えないことを示唆している。ただ、生徒に反発されて思わず本音を叫んでしまう沸点の低さには、それは教師としてどうなの?と思ってしまった。しかし、最後の最後に怒ると逆切れしたみたいになる。早い段階の方がざっくばらんな感じがあるのでまだいいのかもしれない。
それから、本題とはそれてしまうが、校則が問題なら改正すればいい、くらいは教師に言ってもらいたかった。ルールの問題点は無視して、それに従っているかどうかで正しさを決めているから苦しくなっている部分はある。これもまた日本社会の問題点なのだから、そこは民主主義的手続きでサクッと解決して、そうではない部分に集中して取り組んでいくマインドが必要だろう。
同じような悩みを抱えていた女子高生たちが、それぞれの立場から意見を言い合うことで心が整い、かつての前向きな気持ちを取り戻す。そして恵みの雨が、からからに乾いたプールと心に潤いをもたらした。爽やかな余韻に浸れる青春映画だ。
スタッフ/キャスト
監督
脚本 中田夢花
出演 濵尾咲綺/仲吉玲亜/清田みくり/花岡すみれ/三浦理奈/さとうほなみ
音楽 澤部渡
