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「素敵なダイナマイトスキャンダル」 2018

素敵なダイナマイトスキャンダル [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 世間を騒がした雑誌「ウイークエンド・スーパー」「写真時代」等の編集長として活躍した末井昭の人生を題材にした物語。

末井昭 - Wikipedia

 

感想

 冒頭で、映画のタイトルにもなっている母親のダイナマイト心中後の現場の様子が映し出される。タイトルのポップさとは裏腹に、バラバラになった体や内臓が飛び散る現場は当たり前だが凄惨だ。これを見ていると、母親が色々ある心中の方法の中から敢えてこんな派手な方法を選んだのは、手軽で確実そうだったのもあるとは思うが、何よりも世間を驚かせてやろうというやけっぱちさがあったような気がする。

 

 そんな母親を持った主人公はやがて成長し、岡山の田舎から都会に出て職を転々としているうちに、いつの間にか人気雑誌の編集長を務めるようになる。人気雑誌といってもサブカル臭のするエロ雑誌なので、主人公の周辺を怪しげでヤバそうな人たちがうろうろしている様子はとてもリアリティがあった。そんな人たちの中で、過激すぎて警察にマークされても、抗議の電話がかかってきても常にヘラヘラしている主人公が印象的だった。どこかやけっぱちで冷めた態度は彼の母親の姿と重なる。母親にあんな強烈な事をされたら、やはり子供には何らかの影響を与えるのだろう。主人公も、最悪の事態になればダイナマイトで粉々になればいいだけ、と腹を決めているかのようだった。

 

 

 妻や愛人との女性関係も描かれるが、そこにも主人公の投げやりな生き方が垣間見える。ママス&パパスの「California Dreamin'」が流れる中、愛人と共に湖の上のボートで揺れるシーンはなんだか象徴的で、心に沁みる良いシーンだった。歌の歌詞同様に、ここではないどこかを常に夢見ている。

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 工場勤務から看板屋、キャバレー勤務などを経て雑誌編集長となった主人公。この数奇な人生には偶然や運の要素もあるが、何よりもまず、彼が嫌なことはなるべくやらず、やりたいことをやろうと行動してきたことが大きいだろう。普通の人なら深く考えず、「一所」懸命が大切だと一生懸命に働いて、最初に勤務した工場の労働者として終わっていただろう。自分の人生なんてこんなものだとあきらめた時点で望まない人生を送ることが決定する。

 

 劇中のメガネをかけた登場人物たちがほぼ全員、レンズが手垢でうす汚れているのが気になった。体のどこかをけがしている人も多い。あれは曇った目で社会を見ている人たちを表現しているのか、それともレンズを拭く間もないほど懸命に生きている人たちを表しているのか。あるいは曇った目で社会を見ながら懸命に生きている人たちを示していたのかもしれない。

 

 今だとこの人たちのような存在はどこにいるのだろうと考えたりしながら、面白く観ることが出来た。当時の雰囲気を追体験したような感覚になる。きっと、この時代をリアルタイムで生きた人たちはより感慨深く見ることが出来て、また違った感想を持つのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 冨永昌敬

 

原作

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出演 柄本佑/前田敦子/三浦透子/峯田和伸/松重豊/村上淳/尾野真千子/落合モトキ/嶋田久作

 

音楽/出演 菊地成孔

 

音楽 小田朋美

 

素敵なダイナマイトスキャンダル - Wikipedia

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