★★★☆☆
あらすじ
ローカル局でアナウンサーをする女は、同じ名前の同級生との間に起きた高校時代の出来事を思い出す。
水川あさみ、木村文乃、三浦貴大ら出演。辻村深月の同名小説を映画化。102分。
感想
ローカル局のアナウンサーが主人公だ。高校時代に同じ「きょうこ」という名前を持つ同級生との間に起きた出来事を回想しながら物語は進行する。
クラスの中心的人物だった主人公は、その座を失っていく。だがその過程はとても分かりづらい。いじめを主導したりと権勢をふるっていたが、ボーイフレンドを同名の同級生に奪われたことから失脚したということなのだろうか。それだと本人の自業自得感は薄く、逆にそれで離れていく仲間の方に引いてしまう。
また同じ名前の同級生のキャラもよく分からない。最初は主人公に名前を独占させるなど従順だったが、途中から自己主張もするようになった。だがそれで主人公を追い落とそうとしていたわけでもなさそうで、なにを考えていたのかは分からない。彼女は登場自体が少なく、主人公との関係がどう変化したのかもしっかりとは描かれないので、その時々でどんな心境だったのかは伝わって来ない。
曖昧にしか把握できない二人の物語にもどかしさを感じているところで、今度は同じグループにいた第三の女と彼女に惚れていた男の話が始まってしまい、段々と話の中心が見えなくなってしまった。サイドストーリーはメインの話がしっかりとやった上でやってくれないと混乱するだけだ。
現在と高校時代の話が並行して描かれ、二つの時代で演じる役者は変わるが、誰と誰が同一人物を演じているのか把握するのにかなり苦労した。これも分かりづらさの要因の一つになっている。キャラ付けがしっかりとしていないので、スッと結びつかない。
最初、水川あさみ演じる主人公は、中心人物でない方の「きょうこ」だと思ってしまっていた。映画を軽く見直してみたら、序盤にフルネームで名乗ったり二つの時代の役者をオーバーラップさせたりと、一応は分るようになっていたが、なぜかわかりづらい。キャスティングや演出に問題があるような気がする。原作は未読だが、叙述トリックがあるようなので狙った可能性もあるが、なんでそんな分かりづらいことするの?と思うだけなので、効果的だったとは思えない。
天岩戸の話や日蝕、鏡の反射光など、皆の中心、輝ける太陽のポジションについての暗示的な演出があって深みがあったが、分かりづらいストーリーではその魅力も半減する。ぼんやりとした輪郭だけが浮かび上がってくる映画だ。鑑賞後に何だったのだろう?と考えてしまうので、尾を引くと言えば引くかもしれない。
それからどうでもいい話だが、クラス会が定期的に開かれ、それに参加するように執拗な電話がかかってくるなんて嫌すぎる。想像するだけでゾッとする。
スタッフ/キャスト
監督 矢崎仁司
脚本 朝西真砂
出演 水川あさみ/木村文乃/三浦貴大/森カンナ/鶴見辰吾