★★★★☆
あらすじ
別荘地でひと夏を過ごす老夫婦。夫の80歳の誕生日に娘が恋人とその息子を連れてやってくる。
原題は「On Golden Pond」。110分。
感想
人生の黄昏時を迎えた老夫婦が主人公だ。夫は自身の衰えた容貌を鏡で見てため息をついたりしている。もはや下り坂しかない人生に寂しさを感じているのだろう。
だからきっと湖畔の別荘でこの老夫婦は、お茶を飲んだり読書をしたりと静かにゆっくりと過ごすのだろうと思っていたのだが、実際は二人でカヌーを漕いだり、ボートで出かけたりと落ち着くことなく動き回る。予想に反してめちゃくちゃアクティブだ。
二人に枯れた老人らしさがなくて、普通に人生を謳歌しているようにしか見えなかったが、この辺りはライフスタイルの違いなのだろう。そんな暮らしの中でも、ふと物悲しさに襲われる瞬間がある。
夫役のヘンリー・フォンダが、偏屈で怒りっぽい老人を見事に演じている。特にリミッターが壊れているかのように声の大きさが調節できず、突然声が大きくなったりするところなどはいかにもだった。そんな夫を明るく温かく見守る妻役のキャサリン・ヘップバーンも良い。
序盤は、夫の痛烈な皮肉や辛らつな言葉をどう受け取っていいのか戸惑う。これにはきっと老いから来る苛立ちのようなものが含まれているのだろうから、笑っていいものかと迷ってしまったが、あまり気にせずシンプルにコメディと見ればよいのだろう。夫自身もそれに薄々気づいた上でそんなキャラクターを演じている。そう考えると少し気が楽になった。
やがて二人は娘の恋人の息子を預かることになる。この孫のような少年と共に生活することで彼らの中に新しい風が吹き、禍根があった娘との関係も改善に向かった。予想できる流れではあったが、確かに心温まる物語だ。
ラストのスカす展開も良い。思わず泣きそうになってしまったが、そのままだったらあざとすぎた。これだとそれを回避しつつ、いつかは二人にも終わりがやって来てしまうことを実感させられる。上手い演出だ。
文句ばっかり言いながらもちゃんと妻には愛を伝える夫と、そんな性格の夫を汲んで励ます妻。長年連れ添った夫婦ならではの二人の関係性に心が動かされる。夫の危機にためらうことなく湖に飛び込んだ妻がカッコ良かった。
こんな人生の黄昏時を迎えるのなら悪くないかもなと思わせてくれる。そのためには別荘を購入したり、色々とやらなければいけないことがたくさんあるが。
スタッフ/キャスト
監督 マーク・ライデル
出演 キャサリン・ヘプバーン/ヘンリー・フォンダ/ジェーン・フォンダ/ダブニー・コールマン
音楽 デイヴ・グルーシン