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「タクシー運転手 約束は海を越えて」 2017

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 大金に釣られて軍事弾圧真っ只中の光州へドイツ人ジャーナリストを連れていくことになったタクシー運転手。実話を基にした映画。

光州事件 - Wikipedia

 

感想

 デモで渋滞が起きると舌打ちをしながら引き返すようなタクシー運転手の主人公は、報酬の大金に目がくらみ、軍事弾圧が行われているという光州の実情を探ろうとするドイツ人ジャーナリストを現地に連れていく仕事を引き受ける。最初は金さえ手に入ればいいという主人公の軽薄な態度が、まずはコミカルに描かれる。

 

 だが現地に入り実際に軍隊が市民に暴力をふるう姿を目の当たりにすると、段々とシリアスな雰囲気が漂い出す。無慈悲に殴る蹴るを繰り返すなど、なかなかの生々しい映像で、観ているだけで辛くなってくる。自国を守るための軍隊が国民に向かって危害を加える様子はどう考えても矛盾に満ちていて、なんともいえないやるせなさがある。これは誰のためにそして何のためにやっているのだと憤りが湧いてくる。ヘラヘラしていた主人公の顔も次第に真顔になっていく。

 

 

 それでも一度は娘のためにソウルに戻ろうとした主人公だが、思い直し再び光州に引き返すシーンは印象的だった。一度真実を知ってしまったら、もはや今まで通り、普通に暮らすことは出来ないという事だろう。主人公がそれまでの他人事ではなく、当事者として行動するようになっていく姿には胸が熱くなった。

マトリックス (字幕版)

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 それから、知り合った現地のタクシー運転手の仲間たちが、普通のおじさんでしかないのに急にカッコ良く見えてくる。韓国ではタクシー運転手という仕事に特別な意味や使命感があったりするのだろうか。ただ彼らだけでなく、主人公の周りにいる人々がなんだかんだで皆いい人たちで、ほっこりとした気分にさせられる。庶民が連帯して、助け合って生きていることが良く伝わってくる。

 

 この映画では、何も知らなかった主人公が光州で起きていることを目にした時の、異世界にやって来てしまったかのような呆気にとられた表情が印象的だったが、それだけ軍事政権による情報統制は効果的だったという事だろう。今でも政府は何かと情報を隠したがる。だが今は情報過多の時代なので、少しフェーズが変わってきたのかなという気がしないでもない。

 

 毎日刺激的なニュースが大量に流れる世の中では、すべてに当事者意識を持っていては身が持たない。そのおかげで、逆に当初の主人公のように世間の人々の見て見ぬふりをする技術が上がってしまっているような気がする。そんな状況でこれから社会運動はどのようになっていくのかというのは興味がある。運動はネットで、という事になるのだろうが、それでもやっぱり不満を持った大衆が集まるというのは、権力者にとって一番怖い事のような気もする。

 

 自国の負の歴史にちゃんと向き合えるのは偉いし、それをこうやってエンターテイメント作品として昇華できるのはすごいなと感心した。

 

スタッフ/キャスト

監督    チャン・フン

 

出演 ソン・ガンホ/トーマス・クレッチマン/ユ・ヘジン/リュ・ジュンヨル

 

タクシー運転手 約束は海を越えて - Wikipedia

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