★★★☆☆
あらすじ
太平洋戦争末期の中国。戦況ひっ迫のため、若い軍楽隊と共に最前線に送られた軍曹は、敵陣地の奪取を命じられる。
三船敏郎、仲代達矢、佐藤充ら出演、岡本喜八監督。132分。
感想
上官に反抗した軍曹と、戦力にならない軍楽隊の物語だ。本来なら精鋭を送り込むべき最前線に、扱いづらい厄介者と使えない兵隊を送り込んでいるところに、日本のダメさ加減が凝縮されているといえるだろう。目的のために最善を尽くさず、単なる罰ゲームみたいになっている。勝つ気はあるのか?と疑ってしまうような、何の戦略もない、体面を守ってシステムに従うだけの思考停止の状態だ。
主人公である軍曹が、武器も持ったことのなかった若い軍楽隊を率いて、敵の陣地奪還を命じられる。まずは訓練を行うのだが、機関銃による射撃のリズムを覚えさせて進軍したり、上官を勝手に敵に見立てて捕えさせたりするのは面白かった。
そして、いよいよ作戦が開始される。敵の状況を確認し、作戦を立てて実行する。軍楽隊のメンバーを担当楽器で呼んだり、野球の投手経験者を活用したりと、ワクワクする展開だ。主人公が弱小部隊を率いて敵を打ち負かす、心躍る戦争活劇のような雰囲気があったが、戦いが進み、味方がやられ始めると次第に戦争の現実が浮かび上がってくる。頼もしい主人公が、怯える味方に「俺だって怖い」と打ち明けるシーンは印象的だ。
なんとか敵地を奪還して盛り上がるが、今度は敵の反撃に耐えなくてはならない。いつ何時やってくるか分からず、撤退させても繰り返しやってくる敵との戦いは、精神的にもしんどいし、不毛さも感じさせる。少しずつ味方は減っていき、応援部隊はやって来ず、次第に悲壮感が漂い出す。
もはやこれまでと覚悟を決めた最後の戦いがクライマックスだ。もはや武器を手にすることを止め、陽気な演奏を続けるメンバーの姿は、胸に迫るものがあった。本当は戦いなど望んでおらず、楽しく演奏をしていたかったという無念が伝わる。味方を埋葬しながら「靖国神社に行くのは止めておけ」と忠告する葬儀屋など、随所に反戦のメッセージが込められている映画だ。
彼らに忠臣愛国を説き、勇ましく戦争を語っていた人たちは、この時どこで何をしていたの?と皮肉りたくなる。彼らの無責任な言動に付き合わされて、意味なく死んでいった人たちが気の毒だ。安全な場所でふんぞり返っているなら、せめて勝てる努力はしてくれよと思ってしまうが、それをしていたのかすら疑問だ。偉そうなことを言っておきながら、状況が悪くなったら、責任も取らずに保身に走る人はいつの時代もいる。いい加減気付いてもよさそうなものだが、それに何度も騙されてしまうのが大衆の悲しいところかもしれない。
“2ショット削除”の小泉進次郎、自衛官の党大会歌唱を「私人」いいわけ。首相もおそろい『論点すりかえ』とは?(ハフポスト日本版) - Yahoo!ニュース
彼らの生命が輝いた瞬間をとらえるスローモーションのシーンが、妙に脳裏に焼き付く。無念の人生でも、彼らが確かに生きた証だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 岡本喜八
脚本 佐治乾
出演
伊藤雄之助/佐藤允/天本英世/団令子/仲代達矢/名古屋章
音楽 佐藤勝
この作品が登場する作品
