★★☆☆☆
あらすじ
交通事故で死んでしまった落語家は、残された子供と妻を心配し、身近な人に憑依して彼女を助けようとする。
大泉洋、新垣結衣出演。小説原作。114分。
感想
幼い子供と妻を残して死んでしまった落語家が主人公だ。妻を心配して、誰かに憑依して助けようとする。冒頭の葬式シーンでは、主人公は小松政夫演じる師匠に憑依する。このまま小松政夫と妻役の新垣結衣の掛け合いをメインにやっていくのかと不安になってしまったが、憑依する相手は毎回変わる設定だと知って安心した。久々に小松政夫を見て、この人も死んじゃったなと感慨深くなっていたが、さすがにメインで2時間はきつい。
主人公の妻は、子供を取り上げようとする義父から逃れ、ささら町にやってくる。そして町の人々と交流し、時々憑依して現れる主人公に見守られながら暮らすようになる。それは分かるのだが、ここで何を描こうとしているのかがよく分からない。肝心の主人公は時々現れるだけだし、現れても助けるというよりはその場で言いたいことを言うだけだしで、彼女を常に見守っているようにはみえない。
そもそも最初の葬儀のシーンのノリが軽く、あまり妻子を心配している様子がなかったことも気になった。中盤に主人公が今後の妻を心配し、先に逝ってしまったことを謝る涙のシーンがあったが、それを冒頭にやっておいて欲しかった。それがなかったので、それまでの主人公が無責任に見えてしまう。
幼い子供を抱えて暮らす妻をただ見守るだけの、展開の見えない時間が続くが、赤ちゃんに口出しして来る人々がどんどんと登場するので、もしかしたらこれは子育てドラマなのか?と思い始めた。だが、赤ちゃんを見て勝手にテンションが上がってズカズカと踏み込んでくる老婦人たちや、子供がうるさいと文句を言った男に横からキレ散らかす若い女、「おっぱいと一緒に愛情もあげているのよ」と呪いをかけてくる保健センターの女性職員など、いやな感じがするものばかりで重苦しい気分になる。
後半になると今度は主人公と絶縁状態だった父親の関係がクローズアップされ、ますます話の方向性が見えなくなってしまった。そして回想シーンで本当の父親の姿がたっぷりと描かれるのだが、すべてが想像通りで、わざわざ時間をかけてやる意味があるのかよく分からなかった。ついでに言うと、その前の主人公が息子に憑依して取った行動を振り返って説明するシーンも、何の意味があるのかよく分からなかった。
物語が何を描きたいのか見えなくなっている原因は、死んでしまった主人公をメインにしてしまっている事だろう。夫を失い赤ちゃんと二人きりで生きていくことになった妻の目線で描けば、夫を失った悲しみや将来への不安、そして憑依して助けてくれることに対する喜び、また町の人々との交流で生まれる心強さなど、一貫したものになったはずだ。それなら夫の死を乗り越える物語として、すんなりと受け入れられた。
ノスタルジックな映像や落語家の語り口、近所のお節介に子育て論、家族愛など、あちこちから押しつけがましさがぷんぷんと匂ってくる映画だ。これは主人公が語る主人公の物語なので、「自分が喋りたいことを喋っているだけ」「オチも作れず、人を笑わすこともできない」などと指摘されていた彼のダメなところが、ちゃんと映画のダメなところと一致しているのは面白い。狙ってやっているのならすごいが、そんな映画はそもそも見たくない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 深川栄洋
脚本 山室有紀子
出演 新垣結衣/大泉洋/中村蒼/福島リラ/富司純子/つるの剛士/寺田心/波乃久里子/藤田弓子/小松政夫/石橋凌
撮影 安田光

![([い]6-1)アドバイスかと思ったら呪いだった。 (ポプラ文庫 い 6-1) ([い]6-1)アドバイスかと思ったら呪いだった。 (ポプラ文庫 い 6-1)](https://m.media-amazon.com/images/I/51TEIGbiLwL._SL500_.jpg)