★★★☆☆
内容
ラーメン、餃子、麻婆豆腐など、現在広く日本で親しまれている中華料理。それがどのように日本で普及していったのかを紹介する。
感想
今や当たり前のように食べられている中華料理がどのように日本に伝わったのか。餃子やラーメンなど各メニューごとに辿っていく一冊だ。江戸時代は鎖国していたので、そのほとんどはこの200年ほどで一気に普及したことになる。
単純に多くの中国人が日本に住むようになったことも大きいが、やはり戦争で多くの人が中国に渡ったことが大きいだろう。満州帰りの初代が店を開いたのが始まり、という来歴を持つ町中華のお店は日本各地にたくさんある。
餃子は、戦後に日本に帰国した人たちが各地で店を開いたことで広まったらしい。「帰国した人たち」と簡単に言うが、満州からだけでも引揚者は120万人もいたというからかなりの数だ。同じ日本人とはいえ、異なる風土で暮らし、子どもを産み育ててきた人たちが短い期間にどっと本土にやってくるのだから、社会的にかなりのインパクトがあったはずだ。彼らが餃子を作り、それを求めることで普及していった。
また中国にはない料理名「ジンギスカン」が広まった経緯も興味深い。北京の人気店の羊肉料理を日本人が「ジンギスカン」と呼ぶようになり、それが政府の満蒙政策の一環で満州名物として広められた。本当は20世紀初頭の新しい料理なのに、名前のせいでチンギス・ハーン時代から食べられていることにされてしまったというのも面白い。
それからこの百年ほどの間でも、広く知られていたのに忘れられ、再度知られるようになったのにまたマイナーになろうとしているウーロン茶のように、浮き沈みをくり返すものがあるのも不思議だ。ブームのようなものなのか、歴史は繰り返すのか。
町中華的なメニューからガチ中華まで、各料理が日本にやってきた経緯がよく分かる。だがそのいちいちに帝国主義的な話を絡めてくるのはよく分からなかった。
ジンギスカンのように政治的な意図があったものなら分からないでもないが、それ以外の現地で食べて気に入ったものをただ持ち帰っただけのものにまで、わざわざ言及する必要はあるのだろうか。別に脅してレシピを奪ったわけでもないし、オリジナルを主張しているわけでもない。
数々の研究で言及されているようなので学術的には意義のあることなのだろうが、それが毎回持ち出されることに釈然としないものを感じてしまった。
著者
岩間一弘

