★★★☆☆
あらすじ
高名な画家の大規模な展覧会が開催されるも、展示された作品のひとつが贋作であることが判明する。
本木雅弘、小泉今日子、中井貴一ら出演、倉本聰脚本。112分。
感想
本木雅弘演じる贋作者と小泉今日子演じる元恋人を中心に、周辺人物たちのエピソードが展開される。登場する役者たちは、そのほとんどが60歳前後の同世代で、それでいて今さら感のない現役感があるメンバーだ。邦画では珍しく、良い雰囲気の大人な映画となっている。今だと50歳くらいの役者でも、若者感が滲み出てしまう。
しかし、このメンバーに石坂浩二が加わったことで、ぐらぐらと認知が歪められる。彼は、かつて贋作者と同門で、ライバル関係にあった画壇の大家を演じている。つまり、二人は同世代のはずで、まず何歳の設定?となる。わざわざ年配の人が不自然に若い役をやることはないだろうから、石坂浩二に寄せた年齢なのだろう。
だとしたら、中井貴一演じる番頭を名乗る男は年上だと思っていたけど年下なのか?それなら小泉今日子演じる贋作者の元恋人で、今は大家の妻の年齢は?と、登場人物の年齢に関する疑問が数珠つなぎに湧いてくる。皆と同世代の役者が巨匠画家の貫禄を醸し出すのは難しいと判断したからなのかもしれないが、余計な混乱を招く結果となった。脳がバグる。
贋作を巡る騒動、ミステリアスな贋作者の暮らしぶり、巨匠を追い詰める番頭の暗躍、元恋人の揺れる思いなど、様々なエピソードが絡み合いながら進行する。先の読めない展開に惹きつけられ、最後まで飽きさせることがない。
しかし、その割には終わった時の満足感は低かった。何が待ち受けているのかと期待しながら見ていたが、期待したような何かは何もないまま終わってしまった印象だ。拍子抜けして、結局なんだったの?となってしまう。
おそらく描きたかったのは、美とは何か、能書きなんかで決まるものではないはずだ、ということだろう。しかし、贋作家の美に対する執念がどれほどのものなのか、分かりづらい。門下生時代の事件に何を感じ、その後をどんな思いで生きてきたのかが見えないし、師匠の娘と結婚し、その名声と地位をちゃっかり引き継いだ世渡り上手な巨匠との対比も不明瞭だ。また、元恋人で後に巨匠の妻となった女の心情も伝わってこない。
要するに、すべての描写が足りていない。美術館長や全身刺青の女のエピソードも消化不良のまま、唐突に終わってしまった印象だ。2時間の映画ではなく、12話程度の連続ドラマとして、みっちりとやった方が良かったような気がする。
スタッフ/キャスト
監督 若松節朗
脚本 倉本聰
出演 本木雅弘/清水美沙/菅野恵/萩原聖人/村田雄浩/佐野史郎/田中健/三船美佳/津嘉山正種/仲村トオル/石坂浩二
音楽 住友紀人


