★★★☆☆
内容
罵り言葉「ウスバカ」をめぐる問答を描いた表題作のほか、全10編の短編集。
感想
友人・知人とのやり取りや世間話を題材にしたものが多く収められた作品集だ。「吾輩は猫である」や「サザエさん」みたいに、日常を切り取ったエッセイ風の物語が展開される。
御用聞きのように主人公のボヤきを聞いて勝手に動き出し、いらぬお節介を働いてはちゃっかりと金も受け取る友人の話が多くを占める。この友人の食えない感じも面白いが、それを断れずに受け入れてしまう主人公もまた可笑しみを誘う。これで怒り狂ってしまったら別の展開になってしまうが、困り顔でいるだけだからトボけた味わいが生まれる。
取り上げられる話題が、時代を感じさせるものなのも興味深い。最近一部ネットで話題になっていた、家に獅子舞がやってきて勝手に踊り、金を要求してくるエピソードもある。最近はあまり押し売りとか聞かなくなったが、これだけ連絡手段が発達した現代に、アポイントなしでやってくる人間なんて相手にしてはいけない、という認識が広まったからだろう。
そう考えると、いまだにノーアポイントで突撃してくる宅配業者はちょっと考えた方がいいのでは?とは思わなくもない。不在持ち帰りの対策をしなければとか言っているが、そんなことよりアポイントを取る工夫をした方がいいだろう。最近の劣化ぶりから考えると、空き巣に悪用される危険性も高いが。
大きな敵が前面に控えているのに、仲間同士で分裂していがみ合っている、そういう例はよく耳にするところです。
p258
ユーモラスでトボけた味わいのあるストーリーの中に、時折、芯を食ったような言葉が放たれる。ピリリと物語が引き締まり、ただのユルい話ではないぞと注意深くさせられる。空き巣と仲良く酒を飲み交わした滑稽話が、後日談によって印象ががらりと変わる「留守番綺談」が特に心に残った。
著者
梅崎春生
登場する作品
「猫が知っている」 南幸夫

