★★★☆☆
あらすじ
大好きな姉が結婚することになり、その結婚相手の男に敵対心を持って邪魔しようとする妹。71分。
感想
美しい姉妹に大学教授の父親、それに少し怪しげな若い女中が暮らす大きな屋敷が舞台だ。普通じゃないくらい仲の良い姉妹は女中を小馬鹿にし、その女中は姉妹の父親に手籠めにされている。そんな家庭に姉の婚約者や父親の教え子が絡んで、どことなく密室殺人でも起こりそうな、ミステリーものっぽい雰囲気が漂っている。
だがそこで描かれるのは姉妹の愛憎劇とそれに巻き込まれてしまう人々の人間模様だ。大好きな姉を結婚させたくな奔放な妹は婚約者を誘惑し、二人の仲を引き裂こうとする。ストーリー的にはいかにもなシーンが連続するだけなのだが、鮮やかな緑の庭やそこに咲く赤い花、カラフルな主人公たちの衣装に生々しい肌の色と、豊かな色彩の映像は、時にハッとするような美しさがあった。
障子を突き破るシーンがあったり、意味深に何度も皿や壺が割れるシーンがあったりと、工夫を感じられる場面が多いのも印象的だ。ただ、山荘で妹と婚約者が寝ている様子を姉が隣室で妄想するシーンは、一つの画面に三者を無理やり収めようとした結果、それどういう状況?と思ってしまうような、訳の分からないカットになってしまっていたが。
それから何度も出てくる姉妹がへらへらと笑い続けるシーンはとてもシュールだった。中には演出が前衛的過ぎて、コミカルにすら感じてしまうようなシーンもあった。
終盤に姉妹の悲しい末路が描かれた後、ラストに意外な展開が待ち受けていた。最初にふと感じたミステリーものの予感は、あながち間違っていなかったようだ。
しかし、この映画のタイトルが「夜汽車の女」になっているのはなんだかしっくりこない。一応、夜汽車のシーンはあったのだが、それほど重要な場面には感じなかった。同じ年に五木ひろしが同タイトルの曲を出しているのでそれに引っ掛けたのかと思ったが、この映画の公開の方が2カ月ほど早いのでそういうわけでもないようだ。なんだか不思議だ。
スタッフ/キャスト
監督 田中登
出演 田中真理/続圭子/桂知子/山口明美/雪丘恵介/丹古母鬼馬二
撮影 山崎善弘