★★☆☆☆
あらすじ
商社の重役を誘拐した犯人は、身代金の運搬役にグループ会社の役員を指名し、全テレビ局がその様子を生中継するよう要求する。
渡哲也、永瀬正敏、柄本明ら出演。109分。
感想
テレビで生中継され、日本中の注目を集めながら進行する劇場型の誘拐事件が描かれる。
大勢のマスコミにカメラを向けられる中、犯人に指名されたグループ会社の重役が身代金を運ぶシーンから物語が始まる。大規模ロケが話題となったようだが、確かにCGではないヘリが何台も飛び交う様子は壮観だ。しかし、群衆シーンに関しては、撮影方法が凡庸なせいか、そこまでの臨場感はない。人を集めるのではなく、演出の工夫でもっとなんとかなったような気がする。
重役が身代金を運ぶシーンも長い割には特に何もなく、さらには二回やるので段々飽きてくる。犯人に言いなりの単調な展開なので、そこは別のルートで犯人に迫る二面作戦で行って欲しかった。二度目の受け渡しで身代金を奪われた時に、怪しげな動きを見せていたトラックの詳細を教えてくれなかったのも不満だ。
後半は、集まった手がかりを元に犯人を追い、被害者たちとの関係も明らかになっていく過程が描かれる。前半とは打って変わってとても地味な展開だ。劇場型犯罪の設定もどこかにいってしまった。しかも外を出歩かず、他の署員の報告により進捗していく動きに乏しい演出だ。これは舞台劇なのか?とツッコミを入れたくなる。その方が効率的なのは分かるが、映画的な面白さも追求して欲しかった。
さらに主要人物の一人、プロファイリング担当の若手捜査官が、能力を活用する場もなく、単なる「ベテランに対する若手」という記号的な役割を演じるに過ぎないのも気の毒だ。「若い奴にはわからないだろうけど、年齢を重ねれば色々あるんだよ」と教えられるためだけのポジションだ。渡哲也演じるベテラン刑事が関わる真相は確かに驚きだったが、それもまた、ベラベラとセリフだけで説明されていく。
派手な幕開けから次第に地味となり、やがて松本清張的などんよりとした社会派ドラマとなってエンディングを迎える。環境問題を扱っているのは時代を感じるが、本当に平成の作品なのかと疑ってしまうような昭和臭の漂う映画となっている。
火曜サスペンス劇場みたいでもあり、そういう作風なのかもしれないが、せめてキャスティングの工夫をして、エンタメ感を出して欲しかった。犯人側にめぼしい人がいないので、何か裏があるなと感づいてしまうし、身代金を運ぶ重役ももっと知られた顔の役者の方がよかった。よく知らないおじさんの走る姿を延々見せられ、よく知らない犯人のおじさんとの攻防を見せられてもしんどい。
スタッフ/キャスト
監督 大河原孝夫
脚本 森下直
出演 渡哲也/永瀬正敏/酒井美紀/西川忠志/上田耕一/渡辺哲/大森嘉之/梅垣義明/近藤芳正/伊藤淳史/白井晃
音楽 服部隆之
撮影 木村大作
