★★☆☆☆
あらすじ
婚約者が失踪し、失意に沈む男は、ある日実家で「ユリゴコロ」と題されたノートを発見する。
吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチら出演。沼田まほかる原作。128分。
感想
冒頭で、主人公が恋人を父親に紹介し、婚約を報告する場面が描かれる。この短いシークエンスだけでも、煽り運転や恋人が戸惑う言動などが見られ、主人公のヤバさがにじみ出ている。
そのため、この後の恋人の失踪は、このサイコパス感が怖くなって逃げたのだろうなと勝手に納得してしまった。そして主人公もきっと、驚きはしたもののその事実を受け入れ、あきらめたのだろうと思っていたので、彼がずっと未練を持ち、気にしていたらしいと分かった時には、そうなの?とびっくりしてしまった。
しかし、それに関しては特に何をするわけでもなくほったらかしで、その後は実家で見つけた謎のノートの件が中心になる。いきなりノートに書かれた知らない女の物語が始まるので、話の方向性が分からなくなり戸惑う。
いったいこれは何の話なのだ?と訝しんでしまったが、ある女性殺人者の告白を描く物語自体は面白かった。ただ、手首を切るシーンが妙に多いのには閉口した。そんなに何度も見せる必要があるとは思えず、またかよとイライラしてしまった。こういうシーンが好きな人に向けたサービスシーンだったのだろうか。
主人公はノートに夢中になるが、その書き手の正体を知って驚愕する。だが観客はきっと、主人公が驚愕したことに驚愕したはずだ。状況的に誰が書いたかなんて早い段階ですぐに想像がつく。逆になぜそう思わなかったのかを知りたいくらいだ。
この他にも、ノートの発見の仕方だったり、バイトらとの会話だったり、とにかくぎこちなく不自然な演出が多い。いちいち指摘していたらキリがないくらいだ。オナモミの実をシンボルとして描くのはいいが、殺人の証拠になるのは意味が分からない。彼女の家にしか生息しない特殊な植物なのか?とツッコみたくなる。
中でも、最初と最後を担当する松坂桃李演じる主人公パートが全体的に酷い。ちぐはぐでノイズまみれで、何を描きたいのかさっぱり見えてこなかった。おかげで感動の嵐らしいラストも、これ泣ける話だったの?ときょとんとするだけだった。これがあるから物語の厚みが増すのだろうが、吉高由里子パートだけにした方がまだましだったような気がする。最初と最後が失敗しているなんて最悪すぎる。
それに、「ユリゴコロ」という言葉にも最後までピンと来くることはなかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/編集 熊澤尚人
原作 ユリゴコロ (双葉文庫)
出演 吉高由里子/松坂桃李/貴山侑哉/佐津川愛美/清野菜名/清原果耶/木村多江
音楽 安川午朗

