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「笑いのカイブツ」 2023

笑いのカイブツ

★★★☆☆

 

あらすじ

 大喜利番組への投稿にすべてを捧げていた青年は、やがて劇場の作家見習いとなるが、周囲とうまくやれずに行き詰まっていた。

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 岡山天音、太賀、菅田将暉ら出演。伝説のハガキ職人と呼ばれたツチヤタカユキの同名私小説が原作。116分。

 

感想

 お笑いに情熱を傾ける青年が主人公だ。序盤は大喜利番組へ投稿するために、ネタを考え続ける主人公の姿が描かれる。自分の時間はすべてそれに使っているといった感じで、ぶつぶつと呟き、時々頭を壁に打ち付けながら机に向かい続ける様子には、もはや普通でない空気が漂っていた。

 

 ただ、いかにもニート然とした生活ぶりや相貌をしているのに、ちゃんとバイトをしているのは偉い。仕事中もネタばかり考えているので働きぶりは全然ダメだが、それでもクビになればすぐに別の仕事を見つけている。単純に経済的にやらざるを得ないのかもしれないが、見た目とは違い、社会性がゼロというわけではないのは意外だった。

 

 

 大喜利番組で実績を残した主人公は、やがて劇場の作家見習いとなる。しかし、笑いだけを追求するあまりにまわりから疎まれ、ついには辞めさせられてしまう。このあたりからは、面白さだけを追求したい主人公が、皆で力を合わせて番組や舞台を作り上げている社会に拒まれ、苦悩する姿が浮き彫りになっていく。

 

 ただ、人間関係が不得意だなんだと言い訳しているが、実際は笑いのこと以外は何もしないと決めて、コミュニケーションを拒絶しているだけだ。お笑いの世界で成功するには、面白いネタ以外にも求められることがたくさんあるのに、それはやりたくないと駄々をこねているだけに映る。大喜利番組のルールに則り認められたのなら、お笑いの世界でもそのルールに則り認められるように頑張れよと思ってしまった。

 

 ある芸人に認められ、再び見習い作家となった主人公は、アドバイスによって少しは努力するようになるが、それでもやっぱり根本は変わらない。分かっているのに、それ以外はクソだと笑いだけを追求する主人公の姿はもはや狂人だろう。それならそれで突っ走ってくれればいいのだが、「売れたいのか?」と問われたら「売れたいです」と答えてしまうところが、あまりに「普通」でズッコケる。分かっているのにやれないのが、人間臭さとは言えるかもしれない。

 

 バッティングセンターでホームランを打ちまくった男が、野球の試合で守備や走塁はやりたくないと頑なになっているだけのような、ズレたものを感じてしまう映画だ。自称なのか他称なのか、間違ったストイックさを「笑いのカイブツ」と呼んで悦に入っている感じも滑稽さがある。

 

 ただ、なんとか走塁は頑張ってもらえるなら、代打専門やDHとして彼の才能を活かせないこともない。異物だと排除せず、互いの能力を活かし合い、補い合える包容力のある社会の大切さを痛感する。

 

 笑いの他には投げやりな主人公の狂人ぶりは異常で面白い。だが、でも狂人だからな、と思ってしまう自分がいる。どちらかというと、いかにして彼が狂人になったのか、そちらを詳しく知りたかったかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 滝本憲吾

 

原作 笑いのカイブツ (文春文庫)

 

脚本 足立紳/山口智之/成宏基

 

音楽 村山☆潤

 

出演 岡山天音/片岡礼子/松本穂香/前原滉/板橋駿谷/淡梨/前田旺志郎/管勇毅/松角洋平/菅田将暉/仲野太賀

 

 

 

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