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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「今も未来も変わらない」 2020

今も未来も変わらない (中公文庫 な 74-3)

★★★★☆

 

あらすじ

 作家である女は、大学受験を控えた娘、かつての同僚の友人、最近知り合った若い男など、様々な人々と関わり合いながら日々を過ごしている。

 

感想

 40代の作家の女が主人公だ。娘や友人とカラオケを楽しみ、知り合った若い男と一緒に映画館へ行ったりする彼女の日常が描かれていく。これだけだと能天気に聞こえるが、当然そんなわけはなく、娘の進学は大丈夫だろうか、最近失恋した友人は気落ちしていないか、若い男は自分に気があるのだろうか等と気になる諸問題を抱えている。

 

 だがそれに対する主人公がどっしりとしているというか、あまり気にしていないように見えるのが印象的だ。個人的には娘が塾の先生と付き合っているらしい、という噂は放っておいていいのかと心配になったが、主人公は動じない。娘の普段の言動をじっくりと考察し、大丈夫、と判断したようだった。所詮は本人の問題と、立ち入らないようにしているようにもみえる。

 

 

 彼女はある意味で、他人にも自分にも何も期待していないのかもしれない。ただあるがままを受け入れている。若い男と彼女自身の関係もそんな感じだ。自分を大きくも小さくも見せようとしていないので、歳の差の恋にありがちなよくある悩みは見られない。

 

 相手に対しても自分に対しても期待も卑下もしておらず、だからがっかりすることも、むやみにテンションが上がることもない。そう来たかと平然としている。どんな状況でも面白がれる冷静さがあって、こんな心境になれたら人生は楽だろうなと思ってしまうが、これがなかなか難しい。

 

 普通なら起きそうな展開が起きない物語だ。他の登場人物たちも主人公同様に魅力的で、中盤の、主人公、友人、娘の学校教師の三人が、年下の男をめぐって繰り広げるカラオケルームでの一連の会話には爆笑してしまった。コント風味のやり取りが面白い。また、学校教師とのゲームセンターでのエピソードも可笑しかった。

 

 くっだらない歌詞だなあ。さくらももこ、天才かよ。

p161

 

 そんな予想できない普通じゃないストーリー展開と、そこで交わされる会話や鋭い考察にグイグイと引き込まれてしまう。カラオケにも行きたくなる。

www.youtube.com

 

 主人公を含め登場人物たちはほぼ女性であるが、老若男女が楽しめそうな内容になっているのは、巻末の解説にもあったが、著者が人間の気持ちなんて年齢や性別でそう変わらないと考えているからだろう。きっとそれは時代が変わっても同じで、タイトル通り「今も未来も変わらない」ということだ。

 

 皆がそう思えるようになれば、今ある年齢や性別などに基づいた様々な対立はなくなるのかもしれないなと思ったりした。

 

著者

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解説 井戸川射子

 

 

 

登場する作品

劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>

ロボコップ

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