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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

小説

「文学部唯野教授」 1990

★★★★☆ あらすじ 学内での評判を気にして匿名で小説を書く文学部教授は、大学という独特で特殊な世界の中で、なんとか無難に生きようとしていた。 感想 大学の内情を描く物語だ。実務的な話から派閥争いや教授になるための根回し等のきな臭い話まで、外からだ…

「傷だらけのカミーユ」 2011

★★★★☆ あらすじ 強盗事件の巻き添えとなった恋人を守るため、犯人を追う警部。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の第3作目。フランス文学。 感想 警部である主人公の恋人が、強盗事件に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う場面から物語は始まる。彼女…

「幽 花腐し」 2017

★★★☆☆ あらすじ 芥川賞受賞作で映画化もされた「花腐(はなくた)し」を含む著者の初期作品6編を収めた作品集。 タイトル「幽」の読みは「かすか」。 感想 収録された六編の中のひとつ「幽」は、体を壊して会社を辞めた中年男が、元同僚に借りた一軒家で暮…

「ルーティーンズ」 2021

★★★★☆ あらすじ コロナ禍の緊急事態宣言が発令された社会で、保育園児の娘の面倒を見ながら仕事をするフリーランスの夫婦を描く表題作他、一編を収録。 感想 二編が収められた作品集だが、どちらもある夫婦が交互に語る形式になっているので、連作小説のよう…

「わが母なるロージー」 2011年

★★★★☆ あらすじ 爆破事件の犯人を名乗る男が自首し、仕掛けた残り6つの爆弾の情報と引き換えにある要求をする。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの番外編。フランス文学。 感想 シリーズの主人公である警部が、6つの爆弾を仕掛け、いくつかの要求をす…

「涅槃」 2021

★★★★☆ あらすじ 城を失って没落し、商家に居候していた宇喜多家の長男は、やがて成長して浦上家に仕え、家の再興を目指す。 戦国大名、宇喜多直家を描く歴史小説。 感想 城を失って鞆の浦でひっそり暮らしていた宇喜多家を、備前福岡の商人が訪れるところか…

「その女アレックス」 2011

★★★★☆ あらすじ 若い女が拉致されたとの一報が入るも続報が全くなく、停滞する捜査に焦る警部たち。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の第2作目。フランス文学。 感想 主人公である警部が、拉致された女の行方を追う物語だ。連れ去られた目撃情…

「年の残り」 1968

★★★★☆ あらすじ 同級生との交流を通して過去を回想し、人生に思いを馳せる老人を描いた表題作ほか、全4編を収録。 芥川賞受賞作。 感想 最後に収められた「思想と無思想の間」は、戦前から戦後にかけて活躍した言論人の物語だ。最初はアナーキスト、次に共産…

「悲しみのイレーヌ」 2006

★★★★☆ あらすじ 異常で猟奇的な殺人事件が発生し、捜査を進めていた警部は、犯人が犯罪小説を模倣していることに気付く。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の第1作目。原題は「Travail soigné」、英題は「Irène」。フランス文学。 感想 主人公の…

「シャーロック・ホームズの凱旋」 2024

★★★★☆ あらすじ ヴィクトリア朝京都で名を馳せる探偵、シャーロック・ホームズは、スランプに陥っていた。 感想 京都を舞台にしたシャーロック・ホームズものだ。ホームズの自宅兼事務所はベイカー街221Bではなく寺町通221Bに、京都警視庁と書いて「スコット…

「シャーロック・ホームズの事件簿」 1927

★★★★☆ あらすじ 盗まれた宝石をホームズが犯人から取り戻そうとする「マザリンの宝石」など、12の作品を収めた短編集。 「シャーロック・ホームズ」シリーズの第9作目。 感想 シリーズ最後の作品だ。どの短編も、誰かが殺されてその犯人を捜す、といった単…

「ドーン」 2009

★★★★☆ あらすじ 人類初の火星探査の偉業を成し遂げたチームの一員だった日本人宇宙飛行士の男は、宇宙滞在中に起きた事件が原因で浮かない日々を過ごしていた。 感想 火星から戻って来た宇宙飛行士が主人公だ。偉業を成し遂げ、世界中で持て囃されているのに…

「雨滴は続く」 2022

★★★★☆ あらすじ 同人誌に書いた小説が純文学雑誌に転載されたことがきっかけで、小説家として歩み出した男。 急逝のため未完となった西村賢太の遺作。 感想 中卒でもてない男が主人公だ。どこまで事実に忠実かはともかく、私小説なので著者自身のことだと考…

「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」 1917

★★★☆☆ あらすじ 第一次世界大戦直前にドイツのスパイと対峙するホームズを描いた表題作など、全7編を収録した短編集。 「シャーロック・ホームズ」シリーズの第8作目。 感想 最後に収められた「最後の挨拶」は、ホームズが最後に取り組んだ事件だ。最終回…

「富士」 1971

★★★☆☆ あらすじ 余生を過ごしていた男は、富士山麓の精神病院で、演習学生として過ごした若き日々の手記を書き始める。 表紙画は片岡球子の「富士」。 ミュージアム甲斐ネットワーク公式サイト:【イベント】「山々に魅せられた画家たち」 感想 戦時下の精神…

「ブエノスアイレス事件」 1973

★★★☆☆ あらすじ 心を病んで療養中だった女が、ある朝突然いなくなってしまったことが明らかになる。 感想 ある朝、女が突然いなくなってしまったことから始まる物語だ。なぜそんなことが起きたのか、その過去が明らかになり、そしてその後が描かれていく。映…

「恐怖の谷」 1914

★★★★☆ あらすじ 地方の堀で囲まれた大邸宅で主人が殺され、シャーロック・ホームズとワトスンは真相解明のために現地に向かう。 感想 前半は、外部からの侵入が難しい大邸宅で起きた殺人事件の捜査が描かれる。暗号解読や偽装など、シリーズの過去の短編の内…

「にぎやかな街で」 1968

★★★★☆ あらすじ 終戦間際に知り合った男から罪の告白を聞かされ続ける肉屋の男を描いた表題作他、全3篇を収めた作品集。 感想 表題作は、今は肉屋の在日朝鮮人(明言はされないが)の男が主人公だ。終戦直前に知り合った男との20年に渡る奇妙な関係を描いて…

「 シャーロック・ホームズの生還」 1905

★★★☆☆ あらすじ 死んだとされていたホームズがワトソンの前に現れる「空き家の冒険」など、全13編の短編を収録。 別邦題に「シャーロック・ホームズの帰還」「シャーロック・ホームズの復活」など。 感想 死んだはずのホームズが戻ってくるところから始まる…

「笹まくら」 1966

★★★★☆ あらすじ 大学の事務員として働く男は、かつて関係のあった女性の訃報を受け取ったことがきっかけで、戦時中に徴兵忌避者として日本中を旅したことを回想するようになる。 感想 大学事務員として働く中年の主人公の現在と、徴兵を拒否して全国を逃亡し…

「バスカヴィル家の犬」 1901

★★★★☆ あらすじ 先代がバスカヴィル家に伝わる伝説の魔犬によって殺されたのではと恐れる相続人に、真相究明を依頼されたシャーロック・ホームズ。 コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズの長編第三作目。別邦題に「バスカービルの魔犬」「のろいの魔…

「ペッパーズ・ゴースト」 2021

★★★☆☆ あらすじ 飛沫感染により他人の未来が見える能力を持つ男性教師は、教え子が列車事故に巻き込まれるのを回避させたところ、その父親に興味を持たれ、やがてテロ事件に巻き込まれていく。 伊坂幸太郎著。 感想 飛沫感染により相手の翌日の、最も印象的…

「野坂昭如コレクション2 骨餓身峠死人葛」 2000

★★★★☆ あらすじ 忘れられた炭鉱の町の異様な歴史を物語る表題作など、野坂昭如の中短編を収めた作品集。 副題「骨餓身峠死人葛」の読みは「ほねがみとうげほとけかずら」。 感想 収録作品の中で強烈なインパクトを残すのは、表題作の「骨餓身峠死人葛」だ。…

「シャーロック・ホームズの回想」 1893

★★★★☆ あらすじ シャーロック・ホームズとモリアーティ教授の死闘が描かれる「最後の事件」など、ホームズの活躍12編を収録した短編集。 別邦題に「シャーロック・ホームズの思い出」「回想のシャーロック・ホームズ」。原題は「The Memoirs of Sherlock H…

「今も未来も変わらない」 2020

★★★★☆ あらすじ 作家である女は、大学受験を控えた娘、かつての同僚の友人、最近知り合った若い男など、様々な人々と関わり合いながら日々を過ごしている。 感想 40代の作家の女が主人公だ。娘や友人とカラオケを楽しみ、知り合った若い男と一緒に映画館へ行…

「シャーロック・ホームズの冒険」 1892

★★★★☆ あらすじ シャーロック・ホームズの活躍を描く12の短編集。 感想 シャーロック・ホームズの短編集だ。ほどよい文量でテンポよく事件解決まで進むのでサクサク読める。長編も悪くないが、この気楽さはなかなか良い。しかも短いからといって軽いわけでは…

「カンバセイション・ピース」 2003

★★★★☆ あらすじ 作家の主人公は、幼少期を過ごした世田谷の一軒家で、妻や姪、三匹の猫と住み、一部を友人の社員三人の会社に貸して暮らしている。 感想 世田谷の古い一軒家で大所帯で暮らす作家の男が主人公だ。何か大きな出来事が起きるわけではなく、家を…

「四つのサイン」 1890

★★★☆☆ あらすじ 父親の失踪後、奇妙な出来事が起こるようになった若い女性から相談を受けたシャーロック・ホームズは、ワトソンと共に調査に乗り出す。 原題は「The Sign of Four」。別邦題に「四つの署名」「四人の署名」。 感想 冒頭でいきなり、ホームズ…

「小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇」 2021

★★★★☆ 内容 作家・伊坂幸太郎が選んだ面白い短編小説のアンソロジー。2冊のシリーズの一冊。もう一冊は「オーシャンラズベリー編」。 感想 作家の伊坂幸太郎が面白いとおススメする短編が並んでいる。彼が好きなのも分かる、と妙に納得してしまうものから、…

「夜を走る トラブル短篇集」 2006

★★★★☆ あらすじ 客への不満が募り、酒が飲みたくなってしまう元アル中のタクシードライバーを描いた表題作など、トラブルにまつわる話を集めた短編集。 感想 局員がスト中のため自分たちの手で番組を放送する羽目になったラジオ局の重役たち、学生運動に巻き…