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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

小説

「猫鳴り」 2007

★★★★☆ あらすじ 庭で死にかけていた子猫を飼うことにした子供のいない夫婦。 感想 猫にかかわった人々を描いた作品。そう聞くと、猫大好きな人たちがまさに猫可愛がりするほっこりした様子が描かれているのかと思ってしまうが、全然違う。例えば、最初の章に…

「太陽の季節」 1956

★★★☆☆ 内容 芥川賞受賞の表題作を含む短編集。 感想 表題作は裕福な家庭に育った若者たちの青春。ただし健全な青春ではなく、喧嘩や博奕、女など道徳観の欠如した青春。彼らに感じるのは満たされているが故の生への渇望だ。そこに若者特有の苛立ちや鬱憤のエ…

「リフォームの爆発」 2016

★★★☆☆ あらすじ 我が家のリフォームをすることにした主人公。 感想 リフォームに関する小説という事で、くどいくらいに間取りの説明が繰り返される。 おかげでもしもこの家を訪れることがあったら「ここはもともと茶室だったところですね?」とか、渡辺正行…

「グッド・バイ」 1948

★★★☆☆ あらすじ 闇商売で知り合ったとてつもない美人だが声は悪く怪力の女の協力を得て、十人近い愛人たちとの関係を清算しようとする編集者の男。太宰治の未完の絶筆。 感想 伊坂幸太郎のこの作品をオマージュした小説「バイバイ、ブラックバード」でこの作…

「戦国十二刻 終わりのとき」 2016

★★★☆☆ 内容 豊臣秀頼、山本勘助、徳川家康ら戦国の雄たちの死までの最後の24時間を描く短編集。 感想 大坂夏の陣で死んだ豊臣秀頼を描いた「お拾い様」。淀殿は豊臣家の世継ぎの母親と捉えがちだが、織田家の者でもある。そちら側から見ると色々と歴史の見え…

「濹東綺譚」 1937

★★★☆☆ あらすじ 取材のために私娼窟を訪れた老作家が、若い女と知り合う。 感想 舞台は1936年ごろの東京。盧溝橋事件が起きて日中戦争がはじまる前夜といった時期だが、戦前というよりも関東大震災後という事が意識されながら街の様子が描写されている。戦前…

「地獄変」 1919

★★★☆☆ あらすじ 性格が悪く疎まれてはいるが才能は認められていた絵師が、時の権力者に地獄絵図の屏風絵を書くよう依頼される。宇治拾遺物語 「絵仏師良秀」をアレンジした作品。 感想 絵師の芸術への執念を描いた作品。ストーリーは何となく知っていたので…

「蜜のあわれ」 1959

★★★☆☆ あらすじ 老作家と飼っている金魚との会話。 感想 老作家と少女に擬人化された金魚との他愛のない会話を中心に、会話文だけで構成されている。若干、金魚の描写が曖昧でどんな姿をしているのかイメージしにくい部分はあるが、その時々で魚や人間に姿を…

「死の棘」 1977

★★★★☆ 感想 夫の浮気をきっかけに心を病んでしまった妻。 あらすじ 主人公である夫の浮気をきっかけに心を病んでしまった妻。浮気相手との出来事を微に入り細を穿つように何度も執拗に質問される主人公はたまったものじゃない。 (前略)あらわれているのは…

「しょうがの味は熱い」 2012

★★★☆☆ あらすじ 結婚をのぞむ女とそれをためらう男の同棲カップル。 感想 長年の同棲生活で心がすれ違う男女。一緒に食事をしても互いに別々なものを食べ、会話も少なく、男は連休にさっさとひとりで海外旅行に出かけてしまう。二人の関係が冷めてしまってい…

「鍵」 1956

★★★★☆ あらすじ 初老の男と年下の妻の夫婦生活と、それに利用される娘とその交際相手。 感想 互いの日記を通して夫婦生活が描かれていく。読む前から何となく内容は知っていたのだが、ここまで赤裸々な内容だとは思わなかった。主に夫の日記で性的な内容を多…

「はい、チーズ」 2009

★★★☆☆ 内容 カート・ヴォネガットの没後に出版された未発表短編集。 感想 収められた短編の中で「FUBAR」が一番気に入った。入社時に配属先のスペース不足でただ一人別の場所にデスクを与えられた男。一時的な処置だったはずなのに、そのまま存在を忘れ去ら…

「鳴門秘帖」 1927

★★★★☆ あらすじ 倒幕の動きの疑いがある阿波徳島藩の内情を探るために潜入し、その後消息を絶った隠密を探すため、阿波入国の手立てを探る主人公たち。 感想 冒頭の入れ替わり立ち替わり、次々と様々な登場人物が現れる展開が面白い。しばらくは誰が中心の物…

「マチネの終わりに」 2016

★★★★☆ あらすじ クラシックギタリストの男とジャーナリストの女が出会い恋に落ちる。 感想 ともに40代前後の男女が恋に落ちる。それは10代や20代の恋とは違って、それだけで動くことができない様々な事情を抱えてしまっている。例えば婚約者の存在やそれなり…

「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」 2013

★★★☆☆ あらすじ かつての同僚の女性から余命が少ないことを知らされた隠居生活を送る老人。見舞いの手紙を書き、ポストに投函するために出かける。 感想 手紙を投函するつもりで出かけたのに、気が付けばイギリスを南から北に縦断して、歩いて相手に会いに行…

「サブマリン」 2016

★★★★☆ あらすじ 無免許運転で歩行者を轢いて死なせてしまった少年を担当することになった家裁調査官。 感想 不注意で人を轢いてしまった人と、狙って人を轢いた人では、どちらが罪が重いのか?これから犯罪を犯そうとする可能性が高い人物であれば、その前に…

「サンショウウオ戦争」 1936

★★★☆☆ あらすじ 赤道直下の島で発見されたオオサンショウウオは、真珠を取ったり、海中での工事に活用されていたが、急激に進化し、また増殖もし、やがて人間と対立するようになる。 感想 内容とは関係ないが、まず和田誠による本の装幀が可愛らしくて良い。…

「パンドラの匣」 1946

★★★★☆ あらすじ 結核の療養のために施設に入った青年が、療養所内の様子を友人宛の手紙に綴る。 感想 不思議なマッサージや体操を行い、読書は禁止など、独自のルールに基づいて運営が行われる人里離れた場所にある療養所。なかなか奇妙だが、独自の理論に基…

「島」 1962

★★★☆☆ あらすじ 嵐でインド洋上の島に漂着し、島人に助けられた主人公。独自の世界を築いている島の様子を見て回る。 感想 同じ著者のディストピア小説「すばらしい新世界」とほぼ同じような世界なのだが、こちらはユートピア小説となっている。 bookcites.h…

「供述によるとペレイラは… 」 1994

★★★★☆ あらすじ 舞台はファシズムが台頭する1938年のポルトガル。小さな新聞社で文芸欄を担当する中年の男は、たまたま目にした論文の若い作者を雇おうと電話をしたことで、彼の人生は変わっていく。 感想 タイトル通り、供述書のようなスタイルで書かれた小…

「ドルフィン・ソングを救え!」 2015

★★★☆☆ あらすじ 睡眠薬を飲んで自殺を図った中年女が気付くと、1989年にタイムスリップしていた。青春時代に好きだった二人組のミュージシャンに起きた悲劇を止めるべく、女は動き出す。 感想 過去にタイムスリップしたら、普通は自分自身の人生を修正したく…

「高い城の男」 1962

★★★☆☆ 第2次世界大戦が枢軸国の勝利に終わった世界。 戦勝国の人間がこんな風にもし戦争に負けていたら、と想像するのは、余裕のある人間の空想だなと思えるが、もし戦争に負けた国の人間がこれをやったら痛々しいというか、ヤバさをきっと感じてしまうのだ…

「悪霊」 1873

★★★☆☆ あらすじ ロシアの地方都市で、富豪の地主の息子を中心に巻き起こった政治的な事件。 感想 ロシアに蔓延していた新しい様々な思想。主人公の親の世代の新しい思想を、次の世代の新しい思想が追い出そうとする。まさにロシアが変革の時であることを感じ…

「恐るべき子供たち」 1929

★★★☆☆ 学校へも行かず、家の一室に籠もって日々を過ごす姉弟と、そこに通う友人。 雪合戦での怪我がもとで家での静養を余儀なくされた少年と、それを看病する姉。母親が亡くなり、二人だけで暮らすことになった姉弟は、世間から隔離された部屋の中で、独自の…

「わしの眼は十年先が見える 大原孫三郎の生涯」 1994

★★★★☆ あらすじ 現在のクラボウ、クラレ、中国銀行、中国電力などの社長を務めた岡山県倉敷市の実業家、大原孫三郎の生涯を描く。 感想 大原孫三郎といえば大企業の社長としてだけではなく、大原美術館の設立や労働者の環境改善のための研究所を開設したり、…

「ベロニカは死ぬことにした」 1998

★★★☆☆ 自殺を図るが失敗して、精神病院に運び込まれた女性。心臓に残った後遺症で余命一週間と告げられる。 余命一週間とは、なかなか困る微妙な期間だ。いくら死にたいと思っていてもすぐに死ねるわけではないのでどうしても色々と考えてしまうし、だからと…

「キャッチ=22」 1961

★★★★☆ 第2次大戦中のイタリアの島で、空軍爆撃隊に所属する主人公を取り巻く常軌を逸した日々。 アメリカの映画や音楽などでよく聞く「キャッチ22」というスラングの元となった小説。試しにツイッターでこの言葉を検索してみると山のようにヒットして、い…

「陽気なギャングは三つ数えろ」 2015

★★★☆☆ 4人組の銀行強盗団が、悪質な記者に正体を暴かれそうになり、借金を肩代わりするよう脅される。 シリーズおなじみの4人組が、いつもの通り銀行強盗をするシーンから物語は始まる。その銀行強盗の際の些細なミスによって、記者に目をつけられることにな…

「コンビニ人間」 2016

★★★★☆ コンビニでアルバイトをすることで自分の居場所を見つけた女。芥川賞受賞作。 幼い頃から他人の言動を理解できず、違和感を覚えていた主人公。だがそのことに不満を感じるわけでも、怒りを覚えるでもなく、ただ戸惑い理解できずに困っている。感情に乏…

「愛について語るときに我々の語ること」 1981

★★★★☆ 短編集。 そのどれもが、一見するとストーリーがあるような、ないような内容となっており、まだ続きそうな雰囲気で物語は終わる。ただ、シンプルな文章の端々に、何か深い意味があるような、ないような匂いも漂わせていて、どこか心に引っかかりが残る…