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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

小説

「炎環」 1964

★★★★☆ あらすじ 鎌倉幕府成立前後の出来事を、各人物の目を通して描く連作短編集。直木賞受賞作。 感想 源頼朝の挙兵から鎌倉幕府が成立し安定期を迎えるまでが、短編ごとに主人公を変えながら描かれていく。今やっている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見てい…

「さらば、シェヘラザード」 1970

★★★★☆ あらすじ 締め切りが迫るもなかなか筆が進まず、焦るポルノ小説のゴーストライター。タイトルのシェヘラザードは、「千夜一夜物語」の登場人物で語り手である女性から取られていく。 感想 普通に小説が始まったかと思いきや、第一章が終わった後にまた…

「今夜、すべてのバーで」 1991

★★★★☆ あらすじ 若い頃から酒を飲み続け、ついに限界を迎えて入院することになった男。 感想 今後飲めなくなるからと、入院前にワンカップ酒を二つ、立て続けに飲み干してしまうようなアル中の男が主人公だ。何となく依存症になる人間はだらしがなく、意志が…

「日曜日だけの一カ月」 1975

★★★☆☆ あらすじ 不倫をするなど性的問題を起こした牧師は、1か月の隔離生活を送ることになる。 感想 性的問題を起こし隔離生活を送る主人公が書いた、手記の形式を取る小説だ。毎日書くように指示されたため、一日一章で一か月分、31の章からなっている。そ…

「鑑識レコード倶楽部」 2017

★★★☆☆ あらすじ 週に一度レコードを持ち寄り、コメントや評価は禁止でただじっくりと鑑識するように音楽を聴く倶楽部を立ち上げた主人公と友人。原題は「The Forensic Records Society」。 感想 コメントや評価を言い合うことなく、ただ持ち寄ったレコードを…

「寝相」 2014

★★★☆☆ あらすじ 病後の祖父と狭い家で暮らし始めた孫の若い女。表題作の他「わたしの小春日和」「楽器」の3つの物語を収録。 感想 表題作は、老人と若い女の二人暮らしの様子が淡々と描かれていくのかと思っていたら、次第に家族四代の歴史が語られる壮大な…

「短くて恐ろしいフィルの時代」 2008

★★★☆☆ あらすじ 小さな国とそれを取り囲むように存在する大国。小国の異変をきっかけに諍いが起き、フィルという名の男が大国で台頭する。中編小説。 感想 小国の人口は7人。だけど国土が狭すぎて1人しかいることが出来ず、他の6人は大国の場所を少しだけ…

「なめくじに聞いてみろ」 1962

★★★☆☆ あらすじ 父親が育てた弟子の殺し屋たちを倒すために上京してきた息子。別タイトルは「飢えた遺産」。 感想 父親の弟子の殺し屋たちを、主人公の息子が一人ずつ消していく物語。ただ順番に弟子を見つけ出してきては倒していくのではなく、途中から敵が…

「ならずものがやってくる」 2010

★★★★☆ あらすじ 窃盗癖のため精神科に通う女性を起点に、その関係者たちの過去や未来のある一時期の様子が描かれていく。ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞受賞作。原題は「A Visit from the Goon Squad」。 感想 窃盗癖のある女性の物語から始まり、その…

「暴虎の牙」 2020

★★★★☆ あらすじ ヤクザの息子として生まれ、ヤクザを憎む若い男は、なんの後ろ盾もない徒党を組み、広島で天下を取ることを夢見て暴力団に抗争を仕掛ける。「虎狼の血」シリーズ第3作目で完結編。 感想 第一作目で描かれたよりも前の時代設定で物語はスター…

「ブラウン神父の童心」 1911

★★★☆☆ あらすじ ブラウン神父が数々の事件を解決していく短編集。シリーズ第1作目。別邦題「ブラウン神父の無心」「ブラウン神父の無垢なる事件簿」など。 感想 推理小説で、事件を解決していく主人公がブラウン神父だ。シャーロック・ホームズやエルキュー…

「クジラアタマの王様」 2019

★★★☆☆ あらすじ 現実と夢の世界がつながっていることに気付いた3人の男たち。 感想 19年発表の作品で、09年の新型インフルエンザ騒ぎを下敷きにしているようだが、現在進行中のコロナ禍の世界を予言したかのような物語だ。そしてさらに言うと、今年発生し、…

「明智小五郎事件簿1 「D坂の殺人事件」「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」」 2016

★★★★☆ あらすじ 古書店で起きた殺人事件の謎を解く「D坂の殺人事件」他、全5編。江戸川乱歩の明智小五郎もの作品を発表順ではなく、事件の発生順に並べた全集の第一巻。 感想 明智小五郎が初めて登場する「D坂の殺人事件」では、彼が最初犯人として疑われて…

「ポスト・オフィス」 1971

★★★☆☆ あらすじ 恵まれているとは言えない環境の郵便局で働き始めた男。 感想 郵便局のつらい環境で働き始めた男が主人公だ。昔の話ではあるが、アメリカもずいぶんと酷い労働環境だったのだなと少し驚いた。だが主人公は過酷な待遇にただ甘んじるのではなく…

「ほかならぬ人へ」 2009

★★★★☆ あらすじ 親の反対を押し切って結婚するも妻に浮気をされてしまった男。直木賞受賞作。 感想 由緒ある家系の家庭に育つも、家族の中で常に劣等感を抱えながら生きてきた男が主人公だ。はたから見ると恵まれた環境で何を言っているのだと腹立たしさを覚…

「ブッチャー・ボーイ」 1992

★★★★☆ あらすじ アイルランドの田舎町の貧しい環境で暮らす少年は、友人と過ごす時間が心の支えとなっていたが、ロンドンから引っ越してきた一家の登場によって、様々な歯車が狂い始める。 感想 父親は飲んだくれで母親は心を病み、最初から人生ハードモード…

「ヘヴン」 2009

★★★★☆ あらすじ 壮絶ないじめにあっていた中学生男子は、ふとしたきっかけから同じようにいじめにあっていたクラスの女子と手紙をやりとりをするようになり、時々二人で会うようになる。 感想 いじめを受けて孤独だった主人公にとって、何気ない会話ができる…

「十二月の十日」 2013

★★★★☆ 内容 表題作を含む10の短編集。 感想 短いものもあるが、短編と呼ぶには長すぎるようなボリューム感の小説が収められた短編集。最初の2,3編くらいはあまりピンとこなかったのだが、それ以降から徐々に面白く感じるようになってきた。 中でも一番気…

「熱帯」 2018

★★☆☆☆ あらすじ なかなか筆のすすまない小説家の男は、かつて入手するも途中で紛失し読了できなかった不思議な本の存在を思い出す。直木賞候補作。 感想 「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」を意識した小説で、まずその複雑な物語の構造や多くの人によって…

「フライデー・ブラック」 2018

★★★☆☆ あらすじ 「ブラック・フライデー」セール時に凶暴化したショッピング客と店員との攻防を描いた表題作など、12の作品を収めた短編集。 感想 ループものや遺伝子操作により人間が最適化された近未来の世界など、SFぽい内容の短編が多い。以前に観た映画…

「青が破れる」 2016

★★★☆☆ あらすじ ボクサーの男は、難病で余命いくばくもない恋人の見舞いに行く友人に付き合わされる。他2編。 感想 表題作は、難病の恋人を持つ友人の見舞いに主人公が付き合わされたことから始まる物語。ボクサーでもある主人公の朴訥というか不器用な性格…

「葬送」 2002

★★★★☆ あらすじ ショパンとドラクロワの友情を中心に、ショパンが亡くなるまでの数年を描く。 ドラクロワ・「フレデリック・ショパンの肖像」 プリキャンバス複製画・ ギャラリーラップ仕上げ(8号サイズ) プリキャンバス Amazon 感想 文庫本で4冊、登場人物…

「ケロッグ博士」 1993

★★★☆☆ あらすじ コーンフレークを開発したケロッグ博士と、彼の経営するサナトリウム周辺に集まった人々の人間模様。 ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ - Wikipedia 感想 何かの本で、ケロッグ博士は性欲を減退させるためにコーンフレークを開発したという話を…

「インド夜想曲」 1984

★★★☆☆ あらすじ 消えた友人を探しにインドにやってきた男。イタリア文学。 感想 インドに渡り友人を探す男が各地で様々な人々と出会い、言葉を交わす。「夜想曲」というタイトル通り、どのエピソードもどこか夢の中のように曖昧でぼんやりとしたものばかりだ…

「家族シネマ」 1997

★★★☆☆ あらすじ 売れない女優の妹のために、ばらばらの家族が一緒になってドキュメンタリー的映画に出演することになる。芥川賞受賞作。他2編。 感想 家族と撮影スタッフが突然やって来て、いきなり映画撮影に参加させられることになってしまった主人公。も…

「2001年宇宙の旅」 1968

★★★☆☆ あらすじ 直方体の謎の物体モノリスの登場により目覚ましく進化した人類は、新たに月に現れたモノリスに導かれるように土星を目指す。 感想 先日久しぶりに映画の「2001年宇宙の旅」を見て、やっぱりよく分からないなとモヤモヤする部分があったので、…

「誓願」 2019

★★★★☆ あらすじ クーデターにより宗教国家となったアメリカを、三人の女性の目を通して描く。1985年の小説「侍女の物語」の続編。 感想 前作から35年後に出た続編。前作は一人の女性の視点だけで描かれていたので宗教国家の限られた一面しかわからなかったが…

「1R1分34秒」 2019

★★★★☆ あらすじ デビュー戦勝利の後、連敗を続けるプロボクサーは、新しいトレーナーを迎えて次の試合に挑む。芥川賞受賞作。 感想 何かを始める時に、自分には才能がないと思いながら始める人はいない。少なくとももしかしたらイケるかもという淡い希望くら…

「ハーモニー」 2008

★★★★☆ あらすじ 核戦争後に生まれた互いを慈しみ合う社会。幼少時からそんな社会に息苦しさを感じていたWHO螺旋監察官の女は、世界各地で同時多発的に起きた自殺事件の真相を探り始める。 感想 まずetml(Emotion-in-Text Markup Language)という架空のマー…

「変半身」 2019

★★★☆☆ あらすじ 島伝統の祭りで行われる秘密の儀式に参加させられた主人公は、式の途中で仲間と共に逃げ出すことに成功する。タイトルの読みは「かわりみ」。表題作のほか「満潮」も収録。 感想 なんとなく横溝正史もののような、日本の古い因習を題材にした…