BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

小説

「ケリー・ギャングの真実の歴史」 2000

★★★☆☆ あらすじ 貧しい移民の子としてオーストラリアで生まれ、理不尽な扱いを受けながら育った男は、やがて抑圧と戦う義賊となる。 Ned Kelly 作者:FitzSimons, Peter Bantam Amazon 実在したオーストラリアのヒーロー、ネッド・ケリーを題材にした作品。ブ…

「リンカーンとさまよえる霊魂たち」 2017

★★★☆☆ あらすじ 幼くして病死した息子との別れを墓場で悲しむリンカーン大統領と、その様子を興味深そうに眺める成仏できない魂たち。ブッカー賞受賞作。 感想 墓場にやって来たリンカーンの息子の霊と、それにざわつく周辺を漂っている霊魂たちの物語だ。す…

「たった一人の反乱」 1972

★★★★☆ あらすじ 防衛庁出向を断って天下りした元経産省の男は、妻と死別後すぐに若いモデルと再婚するが、少しずつ彼の生活に異変が生じ始める。 感想 昭和中期を舞台にした物語だ。だが最初は主人公らの暮らしぶりに戸惑ってばかりだった。主人公は地方の裕…

「都会と犬ども」 1963

★★★★☆ あらすじ ペルーの首都リマの士官学校で寄宿舎生活を送る人種・出身・階層の違う様々な少年たち。別邦題は「街と犬たち」。 感想 最初は物語の構造がよく分からなかったが、何人かの生徒の現在と過去が交互に描かれていく群像劇であることが分かってく…

「同志少女よ、敵を撃て」 2021

★★★★☆ あらすじ 独ソ戦争でドイツに村を焼かれ、親を殺された少女は復讐を誓い、女だけの狙撃専門小隊の一員となって戦地に向かう。 本屋大賞受賞作、直木賞候補作。 感想 女だけのスナイパー集団という設定は、日本のアニメにいかにもありそうで、美少女キ…

「ガープの世界」 1978

★★★☆☆ あらすじ 風変わりな母親から風変わりな経緯で生まれた主人公、ガープの人生が語られる。 感想 主人公ガープの数奇な人生が語られていく。だがまずは彼の母親が色々とすごい。結婚はしたくないが子供は欲しいと計画的に妊娠して主人公を産み、戦時中の…

「ピンチランナー調書」 1976

★★★☆☆ あらすじ 同じ特殊学級に子供を通わせる元原発の技術者の男に、自分と息子に起きた出来事をゴーストライターとして物語るよう頼まれた作家の男。 感想 知的障害のある子供を持つ父親が主人公だ。ある時、主人公が20歳若返り、子供が20年歳を取る不思議…

「自負と偏見」 1813

★★★★☆ あらすじ 近所に資産家で独身の男がやって来たことに沸き立つ田舎町の上流階級。 別邦題に「高慢と偏見」「自尊と偏見」「誇りと偏見」など。原題は「Pride and Prejudice」。 感想 田舎町の上流階級に属する一家の5人姉妹の次女が主人公だ。彼女ら姉…

「滴り落ちる時計たちの波紋」 2004

★★★★☆ 内容 表題作をはじめ、全9篇の実験的小説からなる短編集。 感想 実験的な小説が収められた短編集だ。前衛的なものからオーソドックスなものまでバラエティに富んでおり、それぞれ異なる読後感がある。 そんな中で強く印象に残るのは「最後の変身」だ…

「マンハッタン・ビーチ」 2017

★★★★☆ あらすじ 20世紀初頭、ニューヨークのマンハッタン・ビーチ近郊で働く父に付いて回り、そこで成長した少女は、第2次大戦中に成人し、海軍工廠で働き始める。 感想 ニューヨークのマンハッタン・ビーチで育った若い女を中心に、失踪した父親、それに関…

「じんかん」 2020

★★★★☆ あらすじ 松永久秀の二度目の謀反の報を受け取った織田信長は、以前彼から聞いた半生を小姓頭に語り始める。 感想 主家殺し、将軍殺し、東大寺大仏殿焼き払いの三悪を為し、信長に二度も謀反を企てた戦国時代の梟雄、松永久秀が主人公だ。これだけの悪…

「白鯨」 1851

★★★☆☆ あらすじ 凶暴な白鯨「モービィ・ディック」を倒すことに執念を燃やす男が船長を務める捕鯨船に乗り込んだ男。原題は「Moby-Dick; or, The Whale」。 感想 序盤は、主人公が捕鯨船に乗り込むまでの様子が描かれていく。陸に飽きて海の世界を見てやろう…

「ア・ロング・ウェイ・ダウン」 2005

★★★★☆ あらすじ 大晦日の夜、自殺するためにビルの屋上にそれぞれやって来て出会った老若男女4人は、自殺を思いとどまり、その後定期的に会うようになる。 感想 自殺を決意した4人がたまたま出会い、交流を通して再生していく物語だ。冒頭の自殺の名所のビ…

「ジャクソンひとり」 2022

★★★☆☆ あらすじ スポーツトレーナーとして働くブラックミックスの男は、自分らしき人物が映った猥褻な動画が流布していることに気付く。 感想 ブラックミックスの4人の男が、自分と疑われるような見た目の男が映った猥褻動画について、対策を練るために集ま…

「おもろい以外いらんねん」 2021

★★★☆☆ あらすじ 幼なじみの同級生に一緒に漫才をやろうと誘われるも、彼がネットで知り合った別の男とも漫才をやろうとしていることが判明し、釈然としないものを感じる高校生男子。 感想 お笑い好きの高校生が主人公だ。学校の人気者である幼なじみに漫才を…

「惑う星」 2021

★★★☆☆ あらすじ 妻を交通事故で亡くした科学者の男は、心の問題を抱える息子を懸命に育てようとする。 感想 地球以外の星に生命が存在する可能性を研究する科学者と、心の問題を抱える息子の物語だ。生命が存在する条件はとても幅広く、それぞれの惑星の多種…

「気狂いピエロ」 1962

★★★☆☆ あらすじ なかなか仕事が見つからず、妻や子供に対して肩身が狭い思いをしていた失業中の男は、ある日ベビーシッターの若い女と関係を持つが事件に巻き込まれてしまう。原題は「Obsession」。 感想 一夜の浮気ですべての人生が狂ってしまった男の物語…

「黒牢城」 2021

★★★★☆ あらすじ 1578年、織田信長に謀反を起こし伊丹有岡城に立てこもった荒木村重は、城内で起こった事件の謎を、地下牢に押し込めていた信長の使者で軍師である黒田官兵衛に解かせようとする。直木賞受賞作。 www.youtube.com 感想 戦国時代、織田信長に謀…

「山椒魚」 1948

★★★☆☆ あらすじ 体が大きくなりすぎて、自分の住処から出られなくなった山椒魚の悲哀を描いた表題作他、全12編を収録した短編集。 感想 どの短編もちゃんとしたオチがある終わり方でなく、深く余韻を残すものとなっている。だがしっかりと考え抜かれたうえで…

「わたしを離さないで」 2005

★★★☆☆ あらすじ 「介護人」として「提供者」の世話を続ける女は、成人するまで暮らしていた全寮制の学校での思い出を振り返る。 感想 介護人である主人公が、成人するまでを過ごした全寮制の学校時代の暮らしや友人たちとの思い出を回想する物語だ。主人公の…

「性的人間」 1968

★★★★☆ あらすじ 裕福な家庭で育ち、仲間と怠惰な日々を過ごしていた男が、やがて痴漢を行なうようになる表題作のほか、「セヴンティーン」「共同生活」の3つの中編小説を収録。 感想 表題作は、退廃した生活を送っていた主人公が仲間から離れ、痴漢をするよ…

「さようなら、私の本よ!」 2005

★★★★☆ あらすじ 別荘で怪我の静養をする老作家は、絶縁状態から再び交流を持つようになり、隣に住み始めた幼なじみが企てる活動に巻き込まれていく。「おかしな二人組」三部作の三作目。 感想 三部作の三作目とは知らずに読み始めてしまい、最初は登場人物ら…

「異常【アノマリー】」 2020

★★★★☆ あらすじ フランスからアメリカに向かった飛行機は着陸寸前にかつてない乱気流への突入を余儀なくされるが、その後、乗客たちの身に不思議なことが起きる。ゴンクール賞受賞作。 感想 序盤は多様な人物のそれぞれの日常が一人ずつ順番に描かれていく。…

「高瀬川」 2003

★★★★☆ 内容 作家の男が女性記者とホテルで一夜を過ごす様子を描いた表題作のほか、全4編の短編集。 感想 各ページに文字がまばらに並ぶ作品や、二段組と一段組が混じった構成の作品など、実験的な作品が並ぶ。内容も難解なものから読みやすいものまで多様だ…

「この人の閾」 1995

★★★☆☆ あらすじ 仕事で小田原を訪れるも空き時間を持て余すことになった男は、かつての大学の先輩でこの地に暮らす女性に会いに行く。芥川賞受賞作の表題作を含む4つの短編集。 感想 なにか劇的な出来事が起こるのではなく、主人公が内面で思考を巡らし、心…

「ザ・ロード」 2006

★★★★☆ あらすじ 灰が降り積もり、動植物が死滅した荒廃した世界で、南に向かう男と幼い息子。 感想 人類のほとんどが死んでしまい、生き残った者たちが生存競争を繰り広げる世界を旅する親子が主人公だ。ゾンビ映画や「マッドマックス」などで見られる、よく…

「女のいない男たち」 2014

★★★★☆ あらすじ かつて付き合っていた女性の死を告げる電話が深夜にかかって来る表題作、映画化された「ドライブ・マイ・カー」を含む全6編収録の短編集。 感想 久しぶりに村上春樹を読んだらそのすごさを実感した。まず読みやすい。これは本当に重要で、評…

「シーソーモンスター」 2019

★★★★☆ あらすじ バブル時代の嫁姑問題を描いた表題作と郵便配達人が巨大な陰謀に巻き込まれる「スピンモンスター」の2つの中篇を収録。 共通する世界観で8人の作家がそれぞれ異なる時代の物語を描く「螺旋プロジェクト」の作品のひとつ。本書の二つの物語は…

「グッバイ、コロンバス」 1959

★★★★☆ あらすじ プールで知り合った女子大生と付き合い始めた図書館員の若者。別邦題は「さよならコロンバス」。 感想 漫然と日々を過ごす図書館員の主人公が、裕福な会社社長の娘と付き合い始める物語だ。やがて住む世界の違いが二人に影響を与えていく。た…

「嘘と正典」 2019

★★★☆☆ あらすじ マルクスと共に「共産党宣言」を著したエンゲルスの運命を変え、共産主義の誕生を阻止しようとするCIAを描いた表題作他、全6篇のSF短編集。 感想 全6編の中で一番面白かったのは、表題作の「嘘と正典」だ。歴史改変ものだが、最初に少し前振…