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「火花」 2017

火花

★★★★☆

 

あらすじ

 幼なじみと漫才コンビを組む新人の男は、営業先で知り合った破天荒な先輩芸人に魅せられ、弟子入りを志願する。

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感想

 駆け出しの新人である主人公と破天荒な先輩芸人、二人の数年間の芸人生活が描かれる。しかし芸人というのは不思議な職業だ。一見、二人はただ一緒につるんで遊んでいるだけなのだが、それが修行の一環にもなっている。広い意味で、彼らは表現者、アーティストということなのだろう。あらゆる経験が糧となる。

 

 そして彼らは芸術家と同じく、売れればデカいが、売れなければ貧しい生活を強いられる。また、自分の信じる表現が世間に受け入れられないジレンマにも直面する。出口の見えない苦しい生活の中で、様々な葛藤を抱えながら生きることになる。そんなしんどい時間に耐えられてしまうのは、主人公たちの関係のように、同じ夢を持ち切磋琢磨して励まし合える仲間の存在があるからこそだろう。

 

 

 ただ、これはうまく作用する時もあれば、根拠のない安心感を与えてズルズルと泥沼にハマりこんでいくだけの悪影響でしかない時もあるから要注意だ。また、暴走して世間から乖離してしまった集団に変貌してしまうこともある。常に現実世界とは折り合いをつけておかなければならない。

 

 主人公は、そうやって現実世界に踏みとどまろうとした相方の決意によって、夢が潰えてしまう。漫才は一人では出来ないのが、またもどかしいところだ。相方に恵まれる必要があるし、二人で力を合わせなければならない。自分の力だけではどうにもならない部分がある。

 

 主人公コンビの最期の漫才がこの映画のハイライトだ。主人公が夢の終わりの素直な気持ちを盛大に吐露するシーンに胸が熱くなったが、その一方で、最後とはいえ、こんな漫才ダメだろ、と思ってしまっている自分がいた。原作でも同じ場面があって別に気にならなかったが、映像にするとちょっとキツいなと複雑な気分になってしまった。だから彼らは売れなかった、とも言えるが。

 

 ラストで主人公は、おかしくなって迷走中の先輩と久々に再会し、熱く語り合う。あきらめて芸人を辞めたとしても、売れなくて借金を抱えながら芸人を続けたとしても、夢を追うことが出来る、出来たことはかけがえのない尊いものだ。芸人賛歌のメッセージが伝わってくる。一生のうちで、やりたいことをやるだけやった、と思えるものがあることは幸せなことだ。

 

 菅田将暉と桐谷健太の熱演が光る映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 板尾創路

 

脚本 豊田利晃

 

原作

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出演 菅田将暉/桐谷健太/木村文乃/川谷修士/三浦誠己/加藤諒/高橋努/日野陽仁/山崎樹範

 

火花

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  • 菅田将暉
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火花 (小説) - Wikipedia

 

 

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