★★★☆☆
あらすじ
謎のウィルスの蔓延により人類が激減した近未来。生き残った人類は抗体を持つが日光を浴びられない集団と、抗体を持たない集団に分かれて暮らすようになる。
感想
近未来に謎のウィルスが登場するという、まるで現在の状況を予言していたような内容だ。今のところ現実世界では、人類が激減するという状況にまではなっていないが、数か月後に異変が起きて突如そうなってしまう可能性がないわけではない。
しかし、謎のウィルスによって人類が絶滅の危機に陥る、というのはよくあるプロットではあるが、まさかそれが本当に現実に起きるとは思わなかった。
そして映画のようにパニックが起きたり、人類が一丸になったりするのかと思っていたが、実際はわりとのんきに日常生活を続けていたり、相変わらず争いや対立は絶えないしで、これまた想像していたのとは違った。ドラマチックな映画と違うのは、正常性バイアスのなせる業なのだろう。
映画は、ウィルスの抗体を持つ集団と持たない集団の両陣営に分かれた人々の姿が描かれる。ウィルスの抗体を持つ集団は、感染しないのはもちろん、その他に長生きできたり、歳をとりにくかったりなどの利点はあるのだが、それでも正直、太陽の光を浴びられないという欠点は致命的な気がする。彼らは日光を浴びると煙を出しながら苦しみながら死んでいく。それだったら、ウィルスで死ぬ可能性はあるが普通に暮らせる抗体のない人間でいいやと思ってしまった。
それから普通はウィルスを持っているかもしれない人々が差別されそうなものだが、逆に彼らが「大丈夫ですよ、握手ぐらいでは感染しませんから」と上から目線で喋っているのがちょっと面白かった。映画の中では抗体を持っている人々が上の立場として描かれる。
二つの陣営間の対立や陣営の内部での揉め事、陣営を移ろうとする人間に対する人びとの反応などが描かれ、それぞれが現実世界で起きている様々な出来事を連想させる。その他にも移民や洗脳の問題を想起させるエピソードもあり、色々と考えさせられる。ただテンポが悪く、間延びしてしまっている印象だ。
どちらの陣営の人間も、自分たちはまともで相手はおかしな奴らだと思っている。陣営を移っても立場を変えて同じことを言うだけだ。自分たちの置かれた状況に満足しているのならそれはそれでいいのではと思ってしまうが、これでは永遠に対立は解消しない。
それには神木隆之介演じる主人公たちのように互いに交流することが重要で、それにより理解が深まってやがて対立はなくなっていくはずだ。しかし、互いを知るためにまずは仲良くしましょうと言っても、それが出来るなら最初から対立などしないから、となってしまうので難しい。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 入江悠
脚本 前川知大
原作 太陽 (角川ebook)
出演 神木隆之介/門脇麦/古川雄輝/綾田俊樹/水田航生/高橋和也/森口瑤子/村上淳/中村優子/鶴見辰吾/古舘寛治