★★★★☆
あらすじ
謎の怪物が川から現れて人々を襲い、売店で働く男の娘が奪い去られてしまう。
感想
謎の怪物が現れ、娘を奪われた男。当然、一致団結して未知の怪物と対決、という風に物語が進んでいくのかと思いきや、あまりそれはメインで描かれてはいない印象。それぞれがそれぞれの関心をもとに好き勝手に動いている感じがリアルだ。
怪物誕生の原因のくせに、韓国の危機となれば乗り込んできて主導権を握るアメリカや、主人公の訴えをちゃんと聞こうとしない公的機関、大卒なのに職にありつけない主人公の弟、ホームレスの幼い兄弟、と社会に対する風刺があちこちに感じられ、こちらの方がメインなのかなと思わなくもない。それに加えて、コミカルなシーンも散りばめられていて、単なる怪物映画とは言えないような深みが感じられる。
物語は怪物が原因のウィルス対策に重点が置かれていて、それよりまずは怪物の退治だろうと思わなくはないのだが、ウィルスが蔓延している現実の今の世界の姿と重なって興味深い。考えてみれば、ウィルスが蔓延して世界が滅亡するという映画は山のように作られていて、今それに近い事が実際に起きているわけだが、映画のように世界は一致団結なんかしないし、なんならそれを利用して自分たちの有利を引き出そうとする人間もいたりして対立は深まるばかり、という事が良く分かった。
今後のパンデミック物の映画は、こうした新たな認識の上で作られるのだろう。そして今回の世界的なパンデミックもそのうちきっと誰かが映画化するはず。その時、日本がコメディ担当になっていないことを祈るのみだ。
最終的には主人公の家族対怪物というような図式になっていって、それぞれに見せ場がある。どれも良かったが、特に大卒で無職の弟が、警察に見せる反抗心や生き生きと火炎瓶を準備する姿が、民主化デモに熱心だった片鱗が窺えて面白かった。
すべてが期待通りではなく、かなりビターな結末を迎えるが、それもままならない現実を表しているようで良かった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ポン・ジュノ
出演 ソン・ガンホ/ピョン・ヒボン/パク・ヘイル/ペ・ドゥナ/コ・アソン