★★★☆☆
あらすじ
難病を患いながらも、名人を目指し、同世代の羽生善治に挑んだプロ棋士・村山聖(さとし)。事実に基づいた物語。
感想
とにかく役者陣の熱演が光る映画。わきを固めるリリー・フランキーや染谷翔太らがいい演技をしており、柄本時生にいたってはそれなんかずるい、と思ってしまった。得なビジュアルをしている。
そしてメインの二人。松山ケンイチの体重増もすごいが、羽生善治を演じる東出昌大の、羽生善治っぷりがすごかった。将棋を指しているときの表情や扇子を使った仕草などそっくり。主人公の村山聖という人は知らなかったが、こちらもきっとそっくりに演じているのだろう。二人の棋士を眺めているだけで面白かった。
でももしかしたら、将棋の世界を知らない人が見たら、なんでこんな奇妙な演技をしているんだ?と訝しむのかもしれない。自分もそんなに知らないが、何かのドキュメンタリーで羽生善治が将棋を指しているのを初めて見たときは結構驚きだった。一手目から熟考するし、険しい顔をしたり相手の表情を鋭い目で窺ったりと、優勢なのか劣勢なのかもわからないし、勝っても首をひねったりと、不思議な行動ばかり。これは、チェスや囲碁など同様のボードゲームの名人たちもこんな感じなのだろうか。
病気のため手術を余儀なくされた主人公が、母親に子供を作れない体になったことを謝り、母親も健康な体で産んでやれなかったことを謝るという、誰も悪くない、誰も責められない事で互いに謝りあっている姿は切なく、つらかった。
羽生善治に迫りながらも、その寸前で若くして亡くなったという村山聖という人の生涯には色々な思いがよぎる。ただ映画として、それに何かプラスアルファを出来ているのかなという気もする。別に大げさに感動させようとする必要もないが、もう少し踏み込んで描いても良かったんじゃないかという物足りなさもある。全体的に引きすぎていて、薄味の印象になってしまった。
スタッフ/キャスト
監督 森義隆
原作 聖の青春 (角川文庫)
出演
東出昌大/リリー・フランキー/竹下景子/染谷将太/安田顕/柄本時生/北見敏之/筒井道隆/野間口徹/中本賢/鶴見辰吾
音楽 半野喜弘