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「誰も守ってくれない」 2009

誰も守ってくれない

★★☆☆☆

 

あらすじ

 未成年の少年による凶悪事件が発生し、加害者家族である少年の妹を保護するよう命令された刑事。

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感想

 加害者の家族保護をテーマにした物語だ。だが登場する人物がことごとく酷い。ネットで犯人の家族の保護なんてするなと主張する匿名の人たちがいるのはまだ理解できるとして、刑事やテレビまでが公然と同様のことを言い放っていて驚く。颯爽と登場した佐々木蔵之介演じる社会派風の記者ですら、加害者家族なんて吊るし上げられて当然だ、と言い出したのには頭を抱えてしまった。

 

 犯人のしたことと家族は関係ないのだから、彼らを責めるべきではないのは当然だ。そう頭では分かっていても心情的には簡単ではないよね、少年犯罪ならなおさらね、と本音と建前で悩む物語かと思っていたのに、それ以前の話だった。みんなが本音を火の玉ストレートで繰り出す社会だ。

 

 

 加害者家族への事情聴取で刑事たちがみせる言動も酷いものだった。これではあまりにも人権後進国で、普段から日本の人権意識は低いと感じている自分ですら戸惑ってしまうレベルだ。いくらなんでも建前上は人権を守るポーズをする国だと思っていたが、自国だからと評価が甘くなってしまっていたのか?と不安になってしまった。

 

 序盤の、警察が加害者の家に乗り込み、保護という名目で、一家の名字を変更するなど諸々の手続きを有無を言わせぬ空気で一気に済ませてしまうシーンはインパクトがあった。良かれと思って作られたはずの制度が、運用の問題で無慈悲に感じられるものになってしまうお役所あるあるだ。お前には人生の一大転機かもしれないが、こちらは日常茶飯事なのでさっさと終わらせたい、という態度を隠そうともしない。民間がやるような客に寄り添うポーズすらしてくれない。

 

 主人公はその後、犯人の妹を連れて各地を転々とする。その様子は警察のガバナンスのなさや男性刑事が一人で未成年少女を連れ回す危うさなど様々な問題点が目につき、本筋よりもこの映画の中で描かれている国のヤバさばかりが気になってしまった。保護のためになぜ家族をバラバラにするのかも謎だ。

 

 それからボーイソプラノの清らかな歌が流れるシーンやカーチェイスなど、無駄に仰々しいシーンが多いのも鼻についた。ドラマチックな演出のつもりなのかもしれないが、なぜか必ず急発進、急加速、急ブレーキをくり返す車走行のシーンなどは、この映画が醸し出している日本の後進国的なイメージを助長している。

 

 社会派にみえる映画なので、あまりも現実との乖離が激しいことに違和感を覚えてしまうが、トンデモな虚構世界を描いたエンタメ作品だと思えばそれなりに楽しめるのかもしれない。時代劇だったらもっとしっくりきそうな物語だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 君塚良一

 

出演

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志田未来/柳葉敏郎/石田ゆり子/佐々木蔵之介/木村佳乃/松田龍平/東貴博/佐野史郎/津田寛治/柄本時生/ムロツヨシ/菅原大吉

 

誰も守ってくれない - Wikipedia

 

 

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