★★★☆☆
あらすじ
連続殺人鬼ゴーレムの一連の事件を担当することになった刑事は、容疑者のひとりで、殺されて故人となっている男に注目する。イギリス映画。
感想
世間が注目するも難航する連続殺人事件の捜査を押し付けられてしまった刑事が主人公。一人ずつ容疑者に当たっていくのだが、各容疑者に実際の犯行の様子を演じさせる演出が上手い。一連のこの想像シーンによって事件の全体像を説明しつつ、各容疑者の犯行の妥当性を検証している。
ところでこの容疑者の中に唐突にカール・マルクスが登場して戸惑ってしまったが、実は殺された男をのぞいて全員が実在した著名人のようだ。そこに何か意味があるのかと深読みしてしまうが、単純にこの時期にこの事件現場付近に住んでいたから、という事らしい。同時期にこの地域でこんな著名人たちが暮らしていたというトリビアみたいなものか。マルクスがロンドンに住んでいた時期があるとは知らなかった。そしてそれなら彼らが容疑者にされてしまう事があったとしても不思議はない。
捜査により次第に容疑者は絞られ、最終的には殺されてしまった男に焦点が絞られていく。刑事はその男を殺したとして裁判中の、妻である舞台女優の元に何度も足を運ぶようになる。映画はこの刑事と女優のやりとりが中心となり、彼女の半生や人間関係が描かれていく。刑事が、夫が犯人だったら舞台女優は死刑にならずに済むから真相を教えてくれと説得するその論理がよく分からなかったが、善良な男ではなく殺人鬼だから殺したという事であれば情状酌量が望めるという事だったのか。
最後は驚きの急展開で真犯人が明らかになる。途中で何度かそれもあるかも、と思っていた事だったので衝撃はなかったが、上手くミスリードされたなとは感心した。各容疑者に犯行シーンをやらせる想像シーンも、その刷り込みを強化するための効果があった。あとから考えれば様々な事件はすべて真犯人の周辺で起きていた。なるほどね、と納得してしまった。
ただ、いまいち真犯人が何をしたかったのか、その意図がよく分からなかった。世間に名を残すため、自身の芸術性を誇示するため、そして世間の期待に応えるため、といったところが理由だろうか。分からないではないが、そこがまだ少しモヤモヤとしたままでいる。
スタッフ/キャスト
監督 フアン・カルロス・メディナ
脚本/製作総指揮 ジェーン・ゴールドマン
原作 切り裂き魔ゴーレム
出演 ビル・ナイ/オリヴィア・クック/ダグラス・ブース/ダニエル・メイズ /サム・リード/マリア・バルベルデ/ダニエル・メイズ/エディ・マーサン /ヘンリー・グッドマン/ポール・リッター
音楽 ヨハン・セーデルクヴィスト
登場する作品
On Murder Considered as one of the Fine Arts (English Edition)
関連する作品
ダン・リーノ/カール・マルクス/ジョージ・ギッシング