★★★★☆
あらすじ
お見合い相手の熱烈なアプローチに辟易していた警察官は、何者かに拳銃を奪われてしまう。
沢田研二、柄本明、手塚理美ら出演、藤田敏八監督。佐藤正午原作、荒井晴彦脚本。115分。
感想
拳銃を奪われた警官を中心とした群像劇だ。警官に学生、水商売の女、ギャンブラーといった面々が、何度か同じ場所に居合わせたり、すれ違ったりする。鹿児島市が舞台となっているが、この規模の都市ならあり得そうで、絶妙な設定だ。これが東京などの大都市なら、途端に嘘っぽくなる。
主人公である警官の拳銃が奪われることで物語が動き出す。彼が責任を強く感じながらも、黒澤明監督「野良犬」の刑事のように執拗に銃を探し回ることはなく、それでも一日中家でダラダラしているのがいかにもこの時代の空気を表しているように見える。まるで室内犬のように、どこか空虚で、生きている実感が希薄だ。
そして、奪われた拳銃を手にした者たちの物語が展開される。彼らは主人公とは違って切実なる思いがあり、良くも悪くも、死んだようには生きていない。銃を奪った中年の男は、結局グダグダな結末になってしまったが、それでも現実に抗おうとする必死さが伝わってきた。
その男から拳銃を手に入れたのは男子高校生だ。彼はとある事件を目撃し、それに気づいた犯人に何もできないままにボコボコにされてしまった。この犯人を演じる山田辰夫が、最初からヤバい匂いをプンプンとさせていて、すごい存在感だ。強烈な印象を残して、男子高生の屈辱を際立たせる。
ただよく考えると、この男子高生はこの事件も目撃しているし、銃を手に入れた経緯も考えると、犯人が言っていたこともあながち間違いではないのでは?と思わなくもない。だが賢い子は、いつも注意深く周りの様子を見ているものだ。
彼らの思いが絡み合い、物語はクライマックスへと向かう。最後の舞台が、鹿児島から北海道へ移るのもダイナミックだ。色々あったが、結局そこに返ってくるのかという結末は、因果応報とでもいうような、仏教的な何かを感じた。
この群像劇で狂言回し的な役割を担う、柄本明と尾美としのりが演じるギャンブラーコンビが良い味を出している。彼らも生きてる実感を常に噛みしめている人たちだ。彼らのロードムービーとしても楽しめる。
色んな要素の詰まった味わいのある映画だ。エンドロールで流れる後日譚もいい。
スタッフ/キャスト
監督 藤田敏八
脚本 荒井晴彦
出演 沢田研二/村上雅俊/佐倉しおり/尾美としのり/手塚理美/南條玲子/小林克也/山田辰夫/我王銀次/村田雄浩/北見敏之/長門裕之*/高部知子**
*特別出演 **友情出演
